2011 Fiscal Year Annual Research Report
雲南少数民族の生活経験の変化-解放後中国の社会変化をラフ族住民はどう生きたか
Project/Area Number |
21510257
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
西本 陽一 金沢大学, 人間科学系, 教授 (00362012)
|
Keywords | 少数民族 / 雲南 / 中国 / ラフ族 / 生活 / 社会史 / 人類学 / 宗教 |
Research Abstract |
1949年の中華人民共和国成立以来、1950年代後半からの集団化と1960年代後半からの文化大革命、1980年代からの改革開放路線となど中国社会は何度も大きな社会変化を経てきた。本研究は、このような中国の政策・社会変化の中で、中国西南端の雲南省に居住する少数民族ラフ族は、その生活がいかなる影響を受け、どのような変化を遂げてきたかを、文献研究とフィールドワークから明らかにするものである。より具体的にはラフ族住民への民族語(ラフ語)による聞き取りをもとに、人びとの生活史を再構成し、住民がそれらを生活レベルでどのようにとらえ、どのように対応してきたかを再検討する。 本研究は(1)中国の国家政策および民族政策の検討、(2)各時代における少数民族ラフの生活の変化の調査研究、(3)ラフ族住民による自らの過去についての語りに反映される周縁民族の社会的経験の検討の三点を軸に展開してゆくものである。 平成23年度前半には(1)の日本および中国において、解放後中国の国家政策および民族政策の変遷に関わる文献・資料の収集・整理・分析と平行して、(2)(3)の調査研究のため、2011年9月に8日間のフィールドワークを中国雲南省のラフ族村落で実施した。 平成23年度後半は、フィールドワークによって得られた(1)ラフ村落生活全般、(2)ラフ族の村落祭祀形態、(3)ラフ族の村落生活の変化、(3)ラフ族住民の民族間関係における自他認識などのテーマについて、データ整理および予備的な分析をおこなった。これらは平成24年度(事業最終年度)における研究成果報告書作成の準備という意味をもっている。 研究成果については、タイと中国におけるラフ族の食文化の比較研究から「文化」概念と文化政策の検討を行なった英語論文を発表した。またこの英語論文の映像版『ラフは唐辛子』を英語、中国語、タイ語で作成した他、ラフ族の年中儀礼に取材した映像民族誌2本を日本語で作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本事業に関しては、平成22年度に百頁あまりの中間報告書を作成しており、事業最終年度である24年度の最終報告書についても準備を進めている。本事業は文献研究とフィールドワークによるが、各年度のフィールドワーク(民族語)によるデータ収集・整理はおおむね順調だが、膨大な漢語文献・資料の整理・分析がやや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は本事業の最終年度になるため、これまでのフィールドワークで得られたデータの整理・分析を継続するとともに、平成25年2月28日までに、最終報告書をとりまとめる。これまでの各事業年度に実施した中国雲南省のラフ族村落でのフィールドワークによって、(1)ラフ村落生活全般、(2)ラフ族の村落祭祀の変化、(3)ラフ族の村落生活の変化、(4)ラフ族住民の民族間関係における自他認識などのデータが集まっている。その一部はすでに平成22年に中間報告書のかたちで発表したが、最終報告書では約二百頁(中間報告書の二倍)ほどで、本事業の成果をまとめる予定である。このため今後は新たなデータ収集より、既存データの整理・分析が中心となる。一方、既存データの補完が必要になった場合を考え、9月に短い補充調査を実施する。
|