2011 Fiscal Year Annual Research Report
バスク・ディアスポラ政策におけるナショナリティとテリトリアリティ
Project/Area Number |
21510258
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
萩尾 生 名古屋工業大学, 大学院・工学研究科, 教授 (10508419)
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Keywords | バスク / ディアスポラ / ナショナリティ / テリトリアリティ |
Research Abstract |
研究実施計画によれば、最終年度の平成23年度には、次の4つの事項を遂行することとなっていた。(1)2011年11月にサン・セバスティアン市で開催される「第5回世界バスク系コミュニティ会議」への出席、(2)バスク自治州政府関係者への聴取、(3)「東京バスクの家」の活動追跡、(4)成果報告書の作成と配布。 まず(1)については、実際に参加し、参与観察を行った。「バスクの家」の代表ないしメンバーとの懇談や聴き取りから見えてきた「バスクの家」の全体的傾向は、これまで収集してきた基礎データとつきあわせると、おおよそ次のとおりである。<1>南米諸国の「バスクの家」の活動主体は移民3世から5世ないし6世。社会経済的地位は総じて高い。バスク語能力はほぼ喪失。<2>北米諸国は移民2世から3世が主体。バスク語・バスク文化の継承維持が喫緊の課題。<3>欧州諸国は、企業人、上級官吏、研究員などモビリティの高い若年層が主体。高度のバスク語能力を保持。<4>バスク移民が20世紀中葉の短期間に限られ、新規のバスク移民が途絶えているオセアニアでは、バスク・ホームランドとの地理的・心理的距離の大きさが懸案。<5>アジアについては未知数。 次に(2)については、バスク・ディアスポラ政策のおおもとである「在外バスク系コミュニティとの関係法」策定にあたったバスク・ナショナリスト党幹部への聴き取りから、同法が、スペイン政府とバスク自治州政府の権限分掌の問題を巧みに回避しつつ、後者が在外バスク系同胞と直接接触できる法的枠組みを構築することを目していたことが、明らかになった。 (3)については、東日本大震災以降、同団体の活動が事実上麻痺しており、同組織とのコンタクトを保ったものの、新たな知見を得ることはなかった。 最後の(4)については、成果報告を簡易印刷し、主として学界関係者に配布した。また、本研究成果の一部は、一般向け単行本として、近々刊行される予定である。
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