2010 Fiscal Year Annual Research Report
タイ・ミャンマー国境域移動者の生活実践:少数民族の社会ネットワークと文化再生産
Project/Area Number |
21510261
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
速水 洋子 京都大学, 東南アジア研究所, 教授 (60283660)
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Keywords | タイ・ミャンマー国境域 / 越境移動 / 社会ネットワーク文化 / 文化再編 |
Research Abstract |
平成22年度は、私的な事情により、長期海外出張することができなかった。他経費の出張時に短く(二日間)現地メーソットを訪れ、今後の調査につなげるべくインタビューを行った。国境のLearning Centerと呼ばれる移動労働者の子弟のための、タイ国定カリキュラムの枠外のボランティアベースの学校を訪れ、移動労働者の子弟の教育について尋ね、また、キリスト教教会と仏教寺院、そして移動労働者のコミュニティを訪れて話を聞いた。調査としては不十分だが、来年度以降の調査の対象や内容を見極めるうえでは有益であった。 国内では、これまでのミャンマー側の調査をまとめて投稿し、海外査読付きジャーナルで採用が決まった(23年11月発行Journal of Asian Studies掲載予定)。一方、ミャンマー側の事情も含めて調査を進めるべく、院生や他研究者の旅費を補助した。その結果として、現在大学院生と共著による論文を仕上げつつあり、新年度初めには投稿予定である。これは、国境のメーソットと、バンコク近郊の漁港におけるミャンマーからの移動労働者へのインタビューに基づき、二つの地点の移動労働者の家族形成や労働をめぐる実践を比較した論考である。従来、タイ国内のミャンマー人労働者は一つのカテゴリーとして論じられてきたが、メーソットのような国境地域と、より中心に近い地域では、労働者の移動の様態、労働条件や移民としてのステータス、タイへの適応、家族形成、本国とのつながりの保ち方においてかなり大きな相違がみられること。それは、一つには実際には文化的・歴史的・社会的にも連続している国境域と、より国家の内奥にある地域との相違に起因することを指摘し、その二つの相違を戦略的に用いる移動者の適応についても論じている。
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