2009 Fiscal Year Annual Research Report
西アジアの伝統的住居における環境共生機能からみた継承と変容に関する研究
Project/Area Number |
21510275
|
Research Institution | Aichi Sangyo University |
Principal Investigator |
新井 勇治 Aichi Sangyo University, 造形学部, 准教授 (20410855)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宍戸 克実 鹿児島県立短期大学, 生活科学科, 助教 (30535133)
|
Keywords | 西アジア / ダマスクス / サフランボル / 住居 / 環境 / 共生 / 中庭 / ソファ(ホール) |
Research Abstract |
平成21年度の研究目的として設定した、西アジア地域の建築文化において、伝統的な住居での環境共生機能についての観測調査を現地にて行った。本研究の初年度であり、まずは関連研究や過去の調査から得ていた情報を基に、ダマスカス(シリア)、サフランボル(トルコ)を選定し、8月(夏期)に伝統的住居での環境共生機能についての調査を行った。また、3月(冬期)には異なる季節での居住環境を把握する目的で、サフランボル(トルコ)での観測調査を実施した。2都市で合計5つの住居調査を実施することができ、実測図面は2次元化、3次元化での図面を作成した。 ダマスカスの伝統的な住居形態はイーワーンをもつ中庭型であり、一方のサフランボルの住居は中庭がなく、代わりにソファ(ホール)を内部に設ける形態をしており、いずれもそれぞれの地域の典型といえる。住居調査では、図面化のための測量調査、各居室の温湿度測定調査、聞き取り調査(空間の名称と利用目的、家族構成など)、属性データの収集(開口部の規模や方位性、立地条件など)を行った。取得したデータを基に分析を行った結果、特定の居室の居住性と重要性の関係に、明らかな矛盾点が散見された。例えば、サフランボルの住居は、これまで「主室」は天井が高く、見晴らしが良く、居心地が良いと一般的に言われていたが、夏・冬の居室の温度変化から、そのような裏付けを確認することはできなかった。伝統的形態における環境性能を考察する上で、重要な着眼点を見い出すことができたといえる これまでの既往の文献や聞き取り調査からでは、伝統的な住まい方と居住環境性能の関係、形骸化した伝統形態は把握することはできておらず、本研究による現地調査によって得られた結果は極めて意義のあるものといえる。
|