2011 Fiscal Year Annual Research Report
西アジアの伝統的住居における環境共生機能からみた継承と変容に関する研究
Project/Area Number |
21510275
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Research Institution | Aichi Sangyo University |
Principal Investigator |
新井 勇治 愛知産業大学, 造形学部, 准教授 (20410855)
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Keywords | 西アジア / エルサレム / 住居 / 住まい / 環境 / シリア / トルコ / 古代ローマ |
Research Abstract |
平成23年度は研究最終年度のため、平成21・22度に行ってきたトルコやシリア、またその他の国で収集してきた調査データや、住居に関する資料の検証・分析を進めながら、まだ調査を行っていなかった西アジア地域での伝統的住居や商業施設、古代から継承される環境共生機能や、時代の中での形態の変容に関しての調査・考察に行った。 イスラエルのエルサレムでは、世界遺産となっている城壁に囲われた旧市街において、古代から継承される住居、街路ネットワーク、宗教施設・商業施設などの建築構成を対象とし、形態における古代からの変容や継承、建築の環境共生のあり方について調査・考察を行った。特に、住居や街路ネットワークについて2000年間に及ぶ継承性、時代の要求の中で変容をあたかも年輪のように積み重ねてきたモニュメンタルな建築における持続性について、環境共生のあり方を読み解くものとしてエルサレムでの調査は価値のあるものとなった。エルサレム旧市街では、ユダヤ教徒、キリスト教徒、アルメニア正教教徒、そしてイスラーム教徒の4つの居住地区が緩やかに分かれ、それぞれに異なった重要な宗教建築が建てられているが、住居の形態や住まい方を見ると、宗教の区別による違いはなく、住居建築では古代から適応してきた地理的な気候環境との共生が肝要であることが伺える。 また、西アジアではあるが、地中海世界の古代ローマや中世ヨーロッパとの文化・人・ものの交流は盛んであり、もともとあるメソポタミアやヘレニズムなどの古代からの継承に加え、西側文化との影響関係について紐解くことも重要な視点となる。そこで、西欧諸国での西アジア研究に関する資料データの収集とその分析も合わせて重要な作業となっている。
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