2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21510280
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
金井 郁 埼玉大学, 経済学部, 講師 (70511442)
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Keywords | パートタイム労働 / 均等待遇・均衡処遇 / ジェンダー / パートタイム労働法 / 日本的雇用システム / 雇用保険制度 |
Research Abstract |
昨年度は、パートタイム労働法における均等・均衡処遇の歴史的変遷過程を検討したが、今年度はその実践過程として労使によってそれらがどのように受容されているのかを検討した。正社員とパートタイム労働者の仕事の重なりが大きいにもかかわらず雇用区分を分け、雇用慣行全体が正社員と同じでなければ処遇に格差を設けることが合理的という「日本型均衡処遇」の考え方が、パートタイム労働という働き方の処遇を低位にしており、この考え方が企業、労働組合、社会政策によって支持されている。この考え方は、ジェンダー規範によって支えられている。そのため、本来、不合理な処遇格差に歯止めをかけるはずの労働組合においてさえ、その役割を果たしていない。具体的には、正社員と非正社員の処遇差の合理性をはかる基準として、組合員からのアンケートや聞き取りの結果として事例の企業別組合では「本人選択の自由度」に関わる項目((1)働く場所、(2)通勤の利便性、(3)労働時間の柔軟性、(4)残業・転勤の有無など)を採用している。これらの項目で雇用区分間に違いがあるのであれば、処遇に差があることは合理的だとされた。これらの項目は、家庭責任と非常に密接に結びついている。そのため、組合が「本人選択の自由度」を基準に正社員と非正社員の処遇差の合理性を整理したことで、本人選択度の自由度が低いとされた正社員には相対的に家庭責任が軽い男性が、本人選択度の自由度が高い非正社員には、相対的に家庭責任が重い女性が(自ら望んで)配置されるという、ジェンダーによる雇用区分の偏りを強化・固定化しうる可能性がある。ただし、組合員からの聞き取りやアンケート手法について組合員の要望と考えるには手続き的検討課題が残る。 また、パートタイム労働法以外の社会政策においても、ジェンダー規範によって支えられていることが明らかになった。雇用保険制度では、非正社員の中でも日雇労働者や季節労働者など家計維持者の役割が期待される者の失業がクローズアップされると、その失業者性の認定は寛容になる一方で、女性が多数を占めるパートタイムという働き方については、家計補助者として労働者性や失業者性がなかなか認められず、ジェンダー規範に沿った形での線引きが雇用保険制度に内在していた。
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Research Products
(6 results)