2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21510280
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
金井 郁 埼玉大学, 経済学部, 准教授 (70511442)
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Keywords | パートタイム労働 / 均等待遇・均衡処遇 / ジェンダー / 日本の雇用システム / 機械主義 |
Research Abstract |
○日本の雇用システムのパートタイム労働を含めた理論化 パートタイム労働を含めた日本の雇用システムの理論化を試みた。正社員とパートタイム労働者の仕事の重なりが大きいという現状を踏まえて、パートタイム労働者を含めた日本の雇用システムを理論的に考察すると、次の2つの領域があることが明らかになる。すなわち、(1)正社員は「職能ルール」に、パートタイム労働者は「職務ルール」にそれぞれ従うように雇用区分が設計されることで、機会主義を抑制することが困難となる領域(技能の認定領域)、(2)雇用区分の設計上は、2つのルールの同居は可能であるが、実態として、パートタイム労働者が従うとされる「職務ルール」に、「職能ルール」の要素が入り込む余地を与え、パートタイム労働者に対して「職務ルール」と「職能ルール」が混在する領域(職務の境界と仕事の配分、業務の可変性と「普段と異なる業務」)、である。 日本では、正社員には「職能ルール」が適用されているが、パートタイム労働者には、雇用区分の設計上は「職務ルール」が、実際の運営上は「職能ルール」の要素が入り込むというように、2つのルールが混在している。そのため、パートタイム労働者については、機会主義を抑制する方法が内在した雇用ルールとなっていないと考えられる。そして、パートタイム雇用について、内在的に機会主義を抑制する雇用ルールが確立されていないということが、パートタイム雇用の処遇を低位にしている。こうした日本の雇用システムへの理解が進んでいないため、日本の雇用システム自体を見直していく、もしくはシステムに合わせた非正規雇用への規制を検討する動きが起こらず、むしろパートタイム労働者の処遇を低位にとどめる日本の雇用システムをより強固にする取り組みが行われている。このことが企業や労働組合でパートタイム雇用の重要性が増している一方で、処遇改善が進まない状況を生み出しているといえる。
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Research Products
(3 results)