2009 Fiscal Year Annual Research Report
脆弱国家支援のジェンダー分析:抑圧された人々の「人間の安全保障」をめぐって
Project/Area Number |
21510281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高松 香奈 The University of Tokyo, 社会科学研究所, 特任助教 (10443061)
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Keywords | ジェンダー / 開発 / 政府開発援助 |
Research Abstract |
本研究はジェンダー視点から「人間の安全保障」を達成するうえで、国際援助レジームの脆弱国家支援の問題点と影響、そして日本のODAの現状と可能性を、対ミャンマーODAの比較を通して明らかにすることを目的に位置づけた。平成21年度は、DACやFSC、世界銀行/IDA、UNDPの資料整理、およびインタビュー調査を通じて、以下の研究成果を発表することができた。 まず、国際援助レジームで「人間の安全保障」の概念が導入されるも、米国同時多発テロ以降、脆弱国家支援戦略がDACハイレベル会合等で作成・承認される過程において、国家安全保障の要素が顕著に強調されている点明らかにした。また、人間の安全保障を基本方針に掲げる日本のODAでの脆弱国家支援の対応状況について考察した結果、日本のODAでは脆弱国家支援の議論は開始されたばかりであること、また人間の安全保障に関する政府文書や国際社会に向けての政府要人スピーチを比較分析した結果、2001年以降顕著に人間の安全保障の概念の取り扱いに変化がみられるようになった。そして開発援助の分野においても、「全政府アプローチ」的要素が強く示されるに至ったと指摘できる(IAFFE学会発表)。つぎに、脆弱国家下の人間の安全保障上の問題とは何か、ミャンマーの「強制された移動者」へのインタビュー調査を通じ考察した。国民の福祉の向上を目的としない自国政府と脆弱国家であるがゆえに市民に対する援助にも消極的姿勢を見せる国際援助レジームの間で、特に農村地域での人々、特に女性・女児の生活の破綻が明らかになった。現研究段階で指摘できる傾向としては、人間の安全保障が著しく脅かされている脆弱国家下の人々の生活は開発援助の実施を決定づける要因ではなく、むしろ個々人に裨益する援助は中心的課題ではなく、依然として援助実施上・支援実施上、国の統治能力が中心的課題といえる(日本平和学会発表)。
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Research Products
(3 results)