2010 Fiscal Year Annual Research Report
脆弱国家支援のジェンダー分析:抑圧された人々の「人間の安全保障」をめぐって
Project/Area Number |
21510281
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高松 香奈 東京大学, 社会科学研究所, 特任助教 (10443061)
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Keywords | ジェンダー / 開発 / 政府開発援助 |
Research Abstract |
本研究はジェンダー視点から「人間の安全保障」を達成するうえで、国際援助レジームの脆弱国家支援の問題点と影響、そして日本のODAの現状と可能性を、対ミャンマーODAの比較を通して明らかにすることを目的とする。22年度は、ODAの実施機関や関係機関/委員会がどのように脆弱国家支援にアプローチしているのか、国内外における資料収集と聞き取り調査を行った。具体的には国内調査として、日本・英国の対ミャンマーODAに関する資料とデータを入手し、両国のODA政策、脆弱国家支援そしてジェンダー主流化の分析を行った。脆弱国家支援は近年重要なアジェンダでありニーズも高いが、脆弱国家支援は極めて偏ったものであった。また、脆弱国家支援は国際社会の安全保障の課題すなわち「ハイ・ポリティクス」の領域に留まり、MDGsの目標であるジェンダー平等の推進策は積極的に取られていない。援助側をみると国内の意思決定レベルにおける女性の割合が多い場合には、全体として援助拠出が大きくなる傾向が見出せた。(平成21年度研究成果、22年度の研究進捗をとりまとめ、学会(ASA)とリサーチペーパー(SSJN)で発表)。ミャンマー現地聞取り調査(2011年1月)では、政治的要因(民主化指導者アウン・サン・スー・チー氏の解放があったものの総選挙の結果について制裁継続)が援助動向へ強い影響を与えていた。ジェンダー視点からミャンマーの抱える人間の安全保障上の課題を分析すると、とりわけ「人身取引問題」など地域的課題への対応が強く要望されるが、人身取引問題への主要援助国の支援は限られたものであり、UNIAPをはじめとする現地人身取引対策タスクフォースからは、協力が強く要請される。開発援助の中でジェンダー視点、ジェンダー平等は極めて重要な視点として強調されるものの、ミャンマーのように政治的な思惑が交錯する脆弱国家に対しては、ジェンダー視点への配慮、個々人の尊厳は重要視されない。そして現地ドナー諸国の間では、新興援助国である中国との援助調整が中心的課題として指摘された。
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Research Products
(3 results)