2009 Fiscal Year Annual Research Report
性教育・エイズ教育に携わる専門職の性意識に関する質的研究
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21510296
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
松原 弘子 Osaka University of Economics and Law, アジア太平洋研究センター, 研究員 (40465654)
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Keywords | 性教育 / ジェンダー / セクシュアリティ / 性感染症予防 / 生命倫理 / 性意識 |
Research Abstract |
本研究は、性教育を実施している医師、保健師、教師、NGOスタッフなどの専門職が、性行為に関連して生じる各種の問題を他者に伝える際に直面する、価値の葛藤とその克服の過程を知り、将来の性教育を実施する人材育成に役立てようとするものである。この目的に即し、平成21年度は、過去の性教育に関する研究の傾向を知るために、1986年から現在までの、主として医学系論文をデータベース化している医学中央雑誌データベース(医中誌WEB)を用い、「性教育」「原著」「抄録あり」の論文397本の抄録から過去の研究傾向を調査した。その結果、過去の性教育の研究は、おおむね次のようなパターンに分かれた。1.学生を対象に授業や講座の効果を調べたもの、2.若者や母親を対象に、性教育のニーズや性に関連する意識や知識について調べたもの、3.性行動の実態について調べたもの、4.性教育の内容について調べたもの、5.性教育の人材育成や、性教育を実施する側の意識を調べたもの、6.特殊な事例研究、7.レビューや研究法などその他の研究。また397本のうち、2000年より以前の論文は40本で、ほとんどの論文はこの10年以内に発表されたものであった。この文献調査と並行して、医療福祉を学ぶ大学1年生男女6名に対して、今までに受けてきた性教育や、性に関することで自分が体験したり、考えたりしていることを自由に聞き取る予備的調査を実施した。この結果から、学生の性に対する意識や価値観は、経験的に学び取ったり、親子や友人関係の中で伝達されたりしたことの中で形成されており、学校での授業は意識面や価値観にはあまり影響を与えていないこと、また実際的な知識の面でも、学生に必要な情報が効果的には伝わっていない可能性が示唆された。この結果を受けて、当初の計画であった、伝える側の性に関わる意識よりも、伝える側が何を伝えようとしていたかを詳細に記述し検討する中で、効果的な性教育実践に必要なものを検討する方が、研究目的に照らした場合には重要と考えられた。
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