2010 Fiscal Year Annual Research Report
性教育・エイズ教育に携わる専門職の性意識に関する質的研究
Project/Area Number |
21510296
|
Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
松原 弘子 大阪経済法科大学, アジア太平洋研究センター, 客員研究員 (40465654)
|
Keywords | 性教育 / ジェンダー / セクシュアリティ / エイズ教育 / 生命倫理 |
Research Abstract |
本研究は、性教育・エイズ教育(以下、性教育等)を実施する立場にある医師、保健師、教師、NGOスタッフなどの専門職が、業務の中で直面する性行為に関連する価値の葛藤とその克服の過程を知ることで、将来の性教育を実施する人材育成に役立てようとするものである。この目的に即し、平成22年度は、1990年代頃から業務として性教育等に熱心に取り組んできた専門職19名(医師2名、行政関係4名うち保健師1名、養護教諭8名、専門職養成者2名、教師2名、NGOワーカー1名)よりインタビューを聴取した。前年度に実施した予備調査の結果を踏まえ、本調査のインタビューでは、伝える側の意図に注目しつつ、あらかじめ質問項目を定めないで(ガイドラインは作成)、インタビュー対象者の個性が反映されるような自由な語りを引き出すことを試みた。その結果、性教育等に熱心に取り組む意欲や意志力、伝える側の意図の多様な変化を記述できるデータが得られた。対象者は、熱心さや意欲を保ち続けられた理由を、目の前のクライアント(生徒、患者、一般市民など)に対して、専門職として最善を尽くすという職業意識に意味づけて説明していた。そしてこのような職業意識の形成には、家族関係や成育歴、個人の性格などの個人要因と、ロールモデルとなる指導者や協力者との出会い、職場の同僚や家族の理解や支え、書籍や情報へのアクセシビリティなどの環境要因が複合的に影響していた。今後はこれらのデータを、話者が自身の経験をどのように解釈しているかに注目して整理・分析していく予定である。分析を深めることで、性教育等に取り組む熱意ある専門職を育成するために必要な条件整理が可能となると考えられた。しかし現在聴取済みのデータ19名のうち男性が3名と少ないため、さらに男性のインタビューデータを聴取して、意欲や熱意に対する意味づけ方に性差がみられるかどうかを検討する必要もあると考えられた。
|