Research Abstract |
本研究は,メディアの中のスポーツにおけるジェンダーとセクシュアリティの内容分析,読み手の解釈の検討を通して,社会におけるジェンダー秩序を検討することを目的とする。平成22年度においては,下記の研究を実施した。 第一に,先行研究・関連研究の整理およびスポーツマンガの収集・閲覧を行った。平成21年度に引き続き,先行研究の整理を行った。本年度では,マス・メディア研究におけるオーディエンス・エスノグラフィー研究,ライフストーリー研究などから,有益な知見を得ることができた。また,平成21年度に引き続き野球マンガの収集・閲覧を継続し,さらにバレーボールを題材にしたマンガ作品の収集・閲覧を行った。 第二に,スポーツマンガの質的内容分析の試行分析を行った。平成21・22年度に収集した野球マンガのうち,女性監督が登場する作品について質的内容分析を行った。登場人物のふるまいがいかなるジェンダー秩序を構築するか,言語の抽出にとどまらず,画像にも注目して分析を行った。その結果,分析マンガ作品において,女性野球監督が男性の競技とされる野球の監督を務めることでジェンダーの越境が描写されていると同時に,身体の描画におけるセクシュアリティの誇張などを通してジェンダー秩序が維持されていることを明らかにした。 第三に,メディアに関するインタビューの試行調査を行った。平成23年3月,1名を対象に自由インタビューを実施し,メディア経験,スポーツ経験についての語りのデータを得た。このインタビューで得られたデータをもとに,平成23年度実施予定の半構造化インタビューの構成について検討を行った。 本研究の意義は,第一に,マンガというメディアにおけるジェンダー秩序およびセクシュアリティの表象を明らかにしたこと,第二に,受け手とのかかわりに関する調査・分析の可能性を提示したこと,の二点である。
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