2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21510299
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
池谷 江理子 高知工業高等専門学校, 総合科学科, 教授 (30249867)
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Keywords | 子育て / 少子化 / 合計特殊出生率 / ジェンダー / イギリス / 国際研究者交流 / ジェンダー地理学 / 国際比較研究 |
Research Abstract |
本研究は深刻な日本の「超少子化」の改善方法を、合計特殊出生率(15~49歳の女性の子ども数平均値)低下が小さく、近年回復が著しい英国の子育て支援体制と比較検討する中から明らかにしようとする。平成21,22年度の研究に基き行った平成23年度の研究成果を以下に列挙する。 1、少子化の統計的実態と背景。日英共に出産年齢の高齢化が進行中だが、日本は英国に比べ30代以降の出生率が低く、20代も低い。特に大都市部では各年齢層とも出生率が低く、出産が高齢化しているが中高年の率すら地方に比べ低い。英国は外国出身者の多い地域の出生率が高いが日本では外国籍の母の出生率は逆に低い。日本は大都市ほど、外国出身者ほど子を産みにくい環境と言える。2、出産に関わる子育て支援。1)出産医療、乳幼児医療支援。英国では産業の発達に伴い貧窮者問題が出現したが、その中で妊娠している女性は最も弱い、生存の危機にさらされやすい存在として認識されてきた。19世紀半ばにはラスボーンにより貧困地域における地域看護が慈善活動として開始され、1930年代には出生率の低下や妊産婦の高い死亡率が社会問題となり、出産における「安全性」が議論された(Kelly,A & Symonds,A.The Social Construction of Community Nursing)。こうした背景のもと第二次世界大戦中にはベヴァリッジ報告が出され、医療・所得等の社会福祉が体系化された。イギリスでは現在、妊婦には担当の看護師がつき、医療無償等、日本と大きな差がある。この背景に資本主義の発達に伴う貧困な人々、妊産婦の惨状と救済の歴史が存在する。2)産休・育休取得。日本ではパート・派遣は実質的に産休・育休の取得が困難で育休の実質利用率は1割台だが、英国では権利保障が厚く、所得補償によるカバーもあり実効性が高い。3、支援環境・制度。家族関係政府支出の対GDP比で英国は日本の4倍に及び手厚い。就学前・貧困層への支援が手厚く、貧困の連鎖を招く子どもの貧困を防ぎ、全ての子どもに「確かな」出発を保障することや児童虐待防止が目的とされている。比較すると日本では就学前児童への教育意識は低く、貧困家庭への支援は生活支援を主とし、教育支援はまだ限定されたレベルにとどまっている。
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Research Products
(7 results)