2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520002
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
戸島 貴代志 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 教授 (90270256)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阿部 恒之 東北大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (60419223)
横地 徳広 弘前大学, 人文学部, 講師 (00455768)
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Keywords | 垂直性 / 嘘 / 感情調節 / 笑い / 生の哲学 / 対話 |
Research Abstract |
通常の二者間での対話では、一般に知られているように、対話を可能にする先行的枠組みや表に現れない情報(陰性情報)が、暗々裏に対話の方向、範囲、内容を制約していることが多い(例「本音と建前」「暗黙知」「場の空気」等)。これについては従来、哲学、心理学の双方において比較的豊富な分析例や解釈例があるが、対話内容には表れないそうした情報のなかには、比較的容易に見いだせる単なる先行的枠組みを超え出た、より捉えにくく気付かれにくい高度な垂直成分も含まれる。この種の垂直成分を有する対話の存在論的条件に関しては、これまでにもフランス構造主義やメルロ=ポンティ(『行動の構造』『知覚の現象学』)、レヴィナス(『全体性と無限』)、あるいは後期ハイデガーの思想などを通じた分析がなされてきたが、こうした垂直成分に関して、本年度は、まずは「嘘」と「笑い」についての討究が心理学、哲学双方で行われ、論文「生命の上流」および「オネスティー」では哲学的な側面での分析がなされた。 心理学の側面から(ポストI) 研究分担者の阿部は、人は必ずしも自分の利得のためだけに「嘘」をつくわけではない、という現象等を心理学の立場から分析した。暫定的な結論として、「嘘」そのものの内容よりも、これの発話時点における相手への感情的効果のほうが、「嘘」の持つ影響力の多くを占める、というものであり、こうした内容を中心にベルギーでの学会発表を行った。 哲学の側面から(ポストII) 横地はレヴィナスの「顔」の観念の超越性を倫理の地平で研究し、日本倫理学会で発表した。研究代表者である戸島は、「笑」がむしろ笑われる者を(笑う者を、ではなく)広い世界へと開放する、という経験を哲学の視点から考察し、趣味のダイビングが奇しくも自殺志願者を思いとどまらせる、という事例を考究した。これが日本哲学会での発表の中心的内容となった。
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Research Products
(5 results)