2011 Fiscal Year Annual Research Report
認知言語学的イメージ・スキーマ理論の現象学的基礎付けの試み
Project/Area Number |
21520010
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
宮原 勇 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 教授 (90182039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮浦 国江 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (50275111)
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Keywords | 現象学 / 認知言語学 / 相互主観性 / 主観化 / 指示詞 |
Research Abstract |
本年の研究は、京都大学山梨教授の主催する研究会<京都言語学コロキアム>での発表「'Subjecti-fication'と'Intersubjectification'-認知言語学と現象学の交差するところ(I)-」(2011年)となって、公表された。ここに於いて問題とされたのは、言語表現、特に知覚野に於ける個体指示において、指示表現の基軸が「主観化」されるという現象の問題である。主観化されても、表現としては主観自体を指す表現は逆に姿を消す。つまり、その言語表現自体を見れば、客観的な描写であるかのようなものが、実態としては主観的描写なのである。申請者の見解では、対象指示に際しては、全く無反省的にただ目の前の現象を素朴に記述する「自然的描像」と、それを自覚化しつつも敢えて表現しない「主観主義的描像」は区別せねばならない。しかも、自己自身を対象化し、さらには言語化することによって眼前の現象野の内に観察可能な指示物として位置づける「客観主義的描像」が成立しうる。さらには、相手との<視点の交換>という操作によって、「相手側から」指示表現を行うということもありうる。つまり、問題は三つあることになる。(1)全く素朴で自然的な現象記述から「主観的」描写が出てくるプロセス、(2)発話主体が対象化され他の対象と同列に扱われるという「客観的」描写が生ずるプロセス、(3)「主観的」描写を前提にしながらも、<視点の交換>により相手側からの現象記述をするプロセスの三つである。特に(3)の問題は「あたかも相手の視点にいるかのように」という他者理解の問題なのであり、deixisという指示詞の使用の問題に留まらず、社交的な表現や敬語の問題と関わり、認知言語学では広く「相互主観性」の問題として取り上げられるようになってきていることを論じた。そして、フッサールの後期の研究テーマである相互主観性の問題の意義を明確化し、認知言語学での対象指示にまつわる主観性の問題に於けるフッサール現象学のアプローチの必要性を論証した。
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