2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代フランス哲学の諸思想を介しての西田、田辺哲学の組織的再解釈の試み
Project/Area Number |
21520012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉村 靖彦 京都大学, 文学研究科, 准教授 (20303795)
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Keywords | 西田哲学 / 田辺哲学 / 現代フランス哲学 / 身体性 / 社会性 / 歴史性 |
Research Abstract |
本年度は、西田・田辺における「自覚」概念とハイデガーの影響を受けた現代フランス哲学における「証言」概念の突き合わせを試みた昨年度の考察を彫琢しつつ、それを双方における身体性・歴史性・社会性といった問題に関する独自の考察の再活用のために生かしていくことを企てた。また、こうした成果をフランスの哲学研究者たちに向けて積極的に発信し、当地の議論空間の中に京都学派の哲学のもつポテンシャルを注ぎ込むことが本研究の眼目のひとつであったので、得られた考察を積極的に海外で発表し、大きな反響を得た。 2010年5月には、フランスのエコール・ノルマル・シュペリユールで招へい教授として一ヶ月滞在したが、その際、講義ではリクールとデリダの関係を証言の問題から論じ、二度の連続講演では、「自覚と証言-別様に哲学すること」と題して、本研究の成果を披露した。その際、田辺の「身体の原始的弁証法」や西田の「歴史的身体」を「ポストハイデガー的」な思索空間において活用するためのアイディアについて、予想以上に活発で有益な議論がなされた。同年10月には、ベルリン・フンボルト大学の神学部での国際コロキウムに招かれ、後期西田のポイエーシスや歴史的身体を主題とした講演を行った。ここでは神学者や文化人類学者等、多様な研究者がディスカッサントとして参加しており、西田のそうした発想を、社会や歴史を形成する象徴系といった角度から考察する可能性をも示唆された。
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