2011 Fiscal Year Annual Research Report
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21520021
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Research Institution | Aichi Prefectural University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
中 敬夫 愛知県立芸術大学, 美術学部, 准教授 (80254267)
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Keywords | 哲学 |
Research Abstract |
平成23年度には、まず全六部-(1)感性論(空間および時間)、(2)論理(「多なき」もしくは「一における一」)、(3)実在と表象(自然と文化)、(4)自由と非自由(行為と無為)、(5)身体論(身体の発生論的構成)、(6)他者論(自然における他者と文化的他者)-から成る「自然の現象学」という筆者のライフワークのうち、第四部(第三部までは既刊)を著書『行為と無為-《自然の現象学》第三編』として公刊した。それはサルトル、メルロ=ポンティ、ハイデッガー、アンリ、ベルクソン、ブロンデル、カント、シェーラー、シェリング、マリオン等を扱いながら、「自由」「行為」の根底に「非自由」「無為」を見ようとしたものである。なお公刊された論文「受苦する神の自由/非自由-シェリングとミシェル・アンリ」は同書第六章の、同じく「Etreou Autrement qu'etre?」シェリング、ハイデッガー、マリオン」は第七章の、それぞれ縮約版である。 また第五部の第一章もしくは第二章に相当する部分を、論攷「マルブランシュの心身合-論」(400字換算で約250枚)として脱稿し、その一部(400字換算で約50枚)を「マルブランシュの機会原因論」として公刊した。最終的にはマルブランシュの身体論をビランの観点から批判しようとするものである。 さらには将来的には第六部の内容となる他者論を、「他性と神-現代フランス現象学に於ける『超越』の問題をめぐって」という題名のもと、宗教哲学会での招待講演として発表した。ジャニコの主張するような「フランス現象学の神学的転回」が本当にあったか否かについての議論を出発点としつつ、マリオン、レヴィナス、アンリにおける他者の他性と神の他性の関係を探ったものだが、レヴィナスの倫理的他者関係の根底にアンリ的な「場所」を置こうとする「場所のアルケオロジー」を主張する結論となった。 いずれも現在日本の学界レヴェルからして、その意義や重要性は十分に認められると思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に計画した著作は、昨年12月に無事公刊された。それに関係する論文も刊行された。また「身体論」のうち、マルブランシュに関する論攷も完成し、その一部は論文として刊行された。さらに宗教哲学会の招待講演では、将来の他者論の布石となるような発表も行なった。 以上からして、研究はきわめて順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は「身俸論」の続きとして、まずメーヌ・ド・ビランのマルブランシュ批判を検討し、その後メーヌ・ド・ビラン自身の身体論について考察する。その際ミシェル・アンリのビラン解釈が、一つの手掛かりとなろう。したがって筆者のめざす身体論は、現代現象学でのこの問題の扱いについての検討へと、必然的に進展するであろう。前期アンリのビラン論、前期メルロ=ポンティの身体論、後期メルロ=ポンティや後期アンリの「肉」論が、いずれ射程に入ってくると思われる。
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Research Products
(5 results)