2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520027
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
冲永 荘八 Teikyo University, 文学部, 教授 (80269422)
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Keywords | 心の哲学 / 形而上学 / 場所 / 自然選択 / 創造論 / 根拠 / 内在的実在論 / 中立的実在 |
Research Abstract |
21年度は生物学的自然主義を糸口としながら、世界の説明が所持しなければならない謎の構造を確認した。そこでひとつ取り上げたのが進化学説であり、ダーウィン的な自然選択や、ドーキンズの利己的な遺伝子の考え方は進化の道筋全体を説明しようとするが、自然選択がなぜ根本的に正しいか、遺伝子の利己性という考えがなぜ大前提なのかについては空白の部分を持つことを見た。これは科学による説明という手段が、あくまで言語内在的なものであり、根拠づけられず、それゆえ別の説明の体系に置き換え可能であり続ける例である。さらに言語による説明は、その説明自身が説明されなくてはならない側面を持つことでも、謎を抱えつつけることを確認した。 こうした根拠や説明への遡及に対して、たとえば心身問題に関する中立的一元論が、心や身体を概念と見なし、実在とは区別することに着目した。科学的説明が物理的な記述を即実在と見なすことでその根拠を謎にするのに対して、中立的一元論は実在を概念や言語の領域に置かないことによって、根拠の謎の問題を最初から成立させない。これは、西田の場所があらゆる述語化以前であるため、場所の起源はそもそも問題にならないことにも通じていた。この問題は、合理的世界の成立のために隠蔽される領域の構造と、合理性を超えるが隠蔽構造を持たない真理との違いとして再検討される必要があった。 知の体系が持つ根拠の形は、科学における合理的知識の根拠の場合と、中立的実在における言語を超越した根底の姿とでは異なっていた。西田の場所論は、この後者の実在の姿に類似する。しかし合理的知識においても、その根拠の追及自体を根拠づけている次元は、言語を超越している点で場所論との共通性があった。この次元を心について合理的に解き得ない問題の解消の場所と見なし、心の形而上学的な問題の解消の次元として認めていく道を探ることが、来年度以後の課題として残された。
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Research Products
(3 results)