2011 Fiscal Year Annual Research Report
メルロ=ポンティの存在論構想における「芸術」の寄与
Project/Area Number |
21520029
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Research Institution | Tokyo Denki University |
Principal Investigator |
本郷 均 東京電機大学, 工学部, 教授 (00229246)
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Keywords | 芸術 / 哲学 / メルロ=ポンティ / 存在論 |
Research Abstract |
本年度は、過去2年間の成果を承けて、総括的な研究を行うべく、パリ国立図書館にて、メルロ=ポンティ遺稿のマイクロフィルム(BNFマイクロフィルム分類番号:R 1997/120235)を閲覧、『眼と精神』草稿のみならず、本稿成立に影響を与えたものと考えられる、ルドルフ・アルンハイム(1904-2007)の主著"Art and Visual Perceptipn : A Psychology of the Creative Eye."(Berkeley and LosAngeles : University of California Press. 1954)のメルロ=ポンティによる読書メモ(BNFマイクロフィルム分類番号:MF12775)を中心に解読を行った。その成果を、「メルロ=ポンティのアルンハイム・メモについて」(『総合文化研究』第9巻、東京電機大学)としてまとめた。この結果として言えることは、アルンハイムのゲシタルト心理学者としての研究成果、およびその考察に関しての影響は、限定的であること、とりわけ、「現象」の解釈に関しては、やはりメルロ=ポンティ自身の立場とのズレとに気づかれる。この点は、むしろ、メルロ=ポンティ自身の立場を鮮明にすることになり、有意であった。 また、もう一つの課題として挙げていた他の哲学者との比較であるが、本年度はミシェル・アンリ(1922-2002)の哲学、とりわけ、アンリの芸術論"Voir l'invisible"におけるカンディンスキー論との比較を行い、ミシェル・アンリ哲学会第三回大会(2011年6月11日於立命館大学)において、「表現と直接性の隔たり アンリ・メルロ=ポンティ・カンディンスキー・シェーンベルク」と題した発表を行った(本発表は、2012年5月刊行予定の『ミシェル・アンリ研究』第二号に掲載決定)。ここでは、アンリの「内在」概念そのものの有意性と優位性を認めつつも、むしろ問題はその内在からの表現のレベル、すなわち<芸術作品が内在の表現である>とされるそのレベルに於いて、<いかにしてその表現が可能となるのか>という問いこそが、芸術作品成立の要であること、しかしアンリはそれを語り得てはいないのではないか、という疑問を、メルロ=ポンティの制度化の概念と<内なるものの外/外なるものの内>といった思考を手がかりとして考察することを目指した。 それから、2012年3月には、実存思想協会(東京大学)にて開催されたシンポジウム「メルロ=ポンティ研究の今」においては、「両義性と可逆性」と題して、メルロ=ポンティの絵画論「セザンヌの懐疑」と『眼と精神』とを手がかりとして、メルロ=ポンティが伝統的な二者択一・二分法に対して、いかなる態度を取っているかについての報告を行った(この報告は、2012年9月刊行予定の『メルロ=ポンティ研究』第16号に掲載予定)。
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Research Products
(4 results)