2011 Fiscal Year Annual Research Report
北方宗教哲学の共生原理と「神」概念-北方少数先住民族とキリスト教-
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21520030
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中里 巧 東洋大学, 文学部, 教授 (40277348)
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Keywords | 北方 / 先住民 / アニミズム / 宗教 / 共生 / サガ / アイヌ / 復讐観 |
Research Abstract |
平成23年度は、1.ノルウェースターヴ教会図像(アナログ写真のデジタル化)の保存・整理作業ならびに分析をほぼ1年間通しておこなった。本作業は、本研究において一貫しておこなっているものであるが、北欧土俗信仰をめぐる初期キリスト教会における特徴を明らかにするものである。2.アイスランド語テキスト・北欧全般における考古学的-民俗学的資料・イヌイットやサーミなど北方少数先住民族資料・日本におけるオホーツク文化やアイヌ文化などの北方少数先住民族資料といった、現在まで中里が調査研究してきた資料をとおして、西洋哲学に対する北方固有の共生原理を究明した。3.アイヌ文化や、アイヌ以前の文化における宗教儀礼を調査するため、旭川に2回調査に訪れた。 1の作業の主な成果としては、トーテムポールに類似した柱様の神像信仰がサーミ文化や初期ゲルマン文化に存在し、こうした神像信仰の変容がノルウェースターヴ教会の柱に認められること、ノルウェースターヴ教会の構成が北欧北方精神史の流れと重なっていること、タキトゥスの『ゲルマニア』に記述されている宗教儀礼やゲルマンの神の痕跡が、ノルウェースターヴ教会の伝承等に認められることなどである。2の作業の主な成果としては、アニミズム的世界観に基づく生活の智恵ないしは大規模な自然破壊をともなわない村落の形成と維持が北方少数先住民族文化には認められること、ただし、血の復讐といった争いについては、とりわけアイスランドのサガ文学に保存されているものが目立つが、イヌイット文化・アイヌ文化・オホーツク文化・フィンランドのカレワラにも、サガほど激しくはないが、復讐という出来事は記述されており、復讐の解決が大きな要点であることを突き止めたことである。3の作業の主な成果は、縄文時代から現代にいたるアイヌ文化の精神視的潮流の存在を認めたことである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アニミズムやシャーマニズムの世界観・そうした世界観にみられる共生原理とキリスト教との軋櫟・日本における共生原理の可能性・西洋哲学や神学にみられる排他性や抽象性について、調査研究するのがH23年度であったが、おおむね目的は達成された。また、H23年度の作業をとおして、共生原理の背後に、復讐観が存在することを発見した。これは大きな成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
4年間にわたる研究期間内に明らかにすることは、北欧北方における共生原理をめぐって、教会画像データベースの構築・アイスランド語文献における共生原理の究明・北欧北方精神史の潮流概観・キリスト教との関連・西洋哲学との関連であり、現在まで、作業はおおむね計画通り進展しており、とりわけ共生原理と復讐観というかたちで、H24年度の作業および全体の総括をおこなうつもりである。
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Research Products
(3 results)