2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520032
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大黒 岳彦 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 教授 (30369441)
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Keywords | メディア / 身体 / 情動 / 感情 |
Research Abstract |
本研究は、全体として従来の「メディア」概念を拡張しつつ、身体を(ルーマンが謂う意味での)素材的<メディア〉とみなすことで、身体に前・言語的なレベルにおける社会構成機能を付与する試みである。平成22年度は、以下の課題について研究を実施した。 I.哲学的身体論の思想史的研究によって、デカルト以来の「心身問題」の構図からはみ出す身体についての諸理論を整理し、二つの系譜にまとめること。 II.高度情報社会という環境において、従来の「身体-社会」の関係が、いかなる変容を遂げつつあるのかを、I.の成果を踏まえながら分析すること。 I.は、身体メディア論における原理論的な考察に属するが、形式的には思想史的考察の体裁を採った。二つの系譜とは「行動的身体」論と「情動的身体」論である。前者の系譜には、ユクスキュルーヴァイツゼッカー-J.J.ギブソン-メルロ=ポンティ-ゴルトシュタインが属し、行動を「形式」として創発する素材として身体を把握する。後者の系譜には、ジェームズ=ランゲ-G.H.ミード-H.ワロン-M.シェーラー、シュミッツ、クラーゲスが属し、身体を皮膚界面で覆われた個体的身体を超える情動の担体として把握する。こうした非デカルト的な身体論の掘り起こしと整理・定式化の作業を論文「〈身体メディア〉の思想史」として纏めた。(勁草書房より2011年中に刊行予定) II.は身体というメディアが実際の具体的な社会において如何なる形で社会構成に関与してきたか、また関与しつつあるのかを、歴史的な観点から分析した。具体的には20世紀初頭のナチス政権期における「身体」の意味、またインターネットに代表されるネットワークメディアが主導的メディアとなりつつある近時の情報社会における「身体」の意味を具体的事例に即して分析した。その成果の一部を『「情報社会」とは何か?-<メディア>論への前哨』(NTT出版、2010)において公表した。
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Research Products
(1 results)