2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520032
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
大黒 岳彦 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 教授 (30369441)
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Keywords | メディア / 身体 / 情報社会 |
Research Abstract |
本研究プロジェクトにおいて、すでに当初の研究課題の里程表として掲げた二つの中間的課題、すなわちI.哲学的身体論の思想史的研究によって、デカルト以来の「心身問題」の構図からはみ出す身体についての諸理論を整理し、二つの系譜にまとめること、II.ルーマンの「メディア」概念を、「身体」を軸として再構成することについては、ある程度の見通しをつけることができた。 上記の諸成の上に立って平成23年度は、次の課題の遂行へと歩を進めた。すなわち、III.I.II.の作業を踏まえつつ、「身体メディア」と「社会」との関連を定式化するという課題である。課題III.を中心に研究を実施しながらも、必要に応じて課題I.II.にも立ち返りながら考察を深めた。当該年度はフッサール、メルロ=ポンティといった現象学派の身体論、また同じくドイツ現象学において独自の情動論を展開したM.シェーラーやシュミッツ、そして異端の哲学者であるL.クラーゲスといった哲学的身体論の諸文献以外に、「身体」概念を理論の要として重要視する社会学の諸理論、具体的にはM.モース、P.ブルデュー、M.フーコー、E.ゴフマンらの諸説の検討も併せて行い、「身体」を「メディア」とみなす本研究の中心的な主張の学説史的な権利付けを図った。また、こうした、哲学的身体論、哲学的情動論、社会学的な行動理論を検討したことで、すでに定式化したN.ルーマンの<メディア/形式>という概念装置を身体に拡張適用する理論的拠り所をも獲得できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ計画どおりに研究は進捗していると自己評価できるが、社会学的な身体諸理論の分析に若干手間取っており、この点については最終年度に補完的研究が必要となることが予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、研究の総まとめ的な課題である最終課題IV.を中心に研究を実施する。当該年度は哲学的な諸文献以外に「情報社会論」「マスメディア論」の諸文献をもサーベイしながら、情報社会の現状の把握に努める。その上で、前年度までの成果を総合しつつ「メディアとしての身体」が「情報社会」といかなる関係にあるかを分析、定式化する。 また24年度はその後半から成果論文の執筆も行う。
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Research Products
(3 results)