2012 Fiscal Year Annual Research Report
病の総合的研究を媒介とした哲学・倫理学の再検討と再構成
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21520035
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小泉 義之 立命館大学, 先端総合学術研究科, 教授 (10225352)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 哲学 / 倫理学 / 生命と病気 / 福祉と生存 / 精神の病 |
Research Abstract |
本科学研究費助成を得て執筆してきた諸論文を中心として、単行本『生と病の哲学――生存のポリティカルエコノミー』(青土社、399p)を刊行した。本書は三部に分かれ、第I部「身体/肉体」では、身体的な病の症状の再考を通して感覚と知覚について哲学的・倫理学的に検討を加えた。とくに痛みの感覚について、近年の脳神経科学の成果とアリストテレス触覚論・分析哲学知覚論の対比を行ない、それぞれの意義と限界を示した。第II部「制度/人生」では、病を主題とする社会科学について哲学的・倫理学的に検討を加えた。とくに福祉国家と厚生経済学の意義と限界を示した。第III部「理論/思想」では、以上の観点から、二十世紀後半の現代思想についてその意義と限界を示した。 また、身体の病の研究成果を踏まえながら、精神の病の研究に向かうために、その準備となる論文を執筆してきた。すなわち、「心理の主体、皮膚の主体」(『ユリイカ』vol. 44-9、2012年8月号、pp. 137-145)、「デカルト『省察』における狂気と病気」(佐藤徹郎他編『形而上学の可能性を求めて――山本信の哲学』工作舎、pp. 204-212)、「包摂による統治――障害カテゴリーの濫用について」(『情況・思想理論編』第1号、2012年12月別冊、pp. 76-95)、「精神と心理の統治」(『思想』no. 1066、2013年2月号、pp. 58-76)などである。最終年度には、これらの成果を踏まえて、単行本を刊行する予定である。 その他、学会発表・書評執筆に加えて、本科学研究費助成事業の研究テーマとの関連で、「哲学者の考えること」(『GRAPHICATION』no. 183、pp. 20-22)、「哲学に映った歯科医療」(『DENTAL DIAMOND』vol. 37, no. 546、2012年12月号、pp. 186-187)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付期間において、研究課題に即して公開した論文数は順調に増えてきた。そして、それらを中心として単行本を刊行することもできた。この単行本は、学界・論壇でも相応の評価を得ている。また、最終年度の研究成果の取りまとめのための準備も進行しており、最終年度には単行本を刊行する予定である。加えて、以上の研究成果を踏まえて、社会的活動も進めることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度を迎え、これまでの研究成果、すなわち、身体的な病をめぐる諸論点の哲学的・倫理学的な考察と、病をめぐる諸制度及び社会諸科学に関する哲学的・倫理学的な考察を活かしながら、精神の病を主題として総合的な考察を進めて、それを取りまとめて単行本として公刊する予定である。同時に、本研究課題に即して論文も執筆し、社会的な活動を進めていく予定である。
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