2009 Fiscal Year Annual Research Report
理性的・社会的動物にかんするヒューム的観点からの研究
Project/Area Number |
21520036
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
伊勢 俊彦 Ritsumeikan University, 文学部, 教授 (60201919)
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Keywords | 哲学 / デイヴィッド・ヒューム / 理性的動物 / 社会的動物 |
Research Abstract |
研究の第一年度にあたり、ヒュームが描出する人間どうしの重層的な社会関係(家族や朋友の直接的相互援助と、公共社会の成員の秩序づけられた自己利益追求)それぞれの起源を、人間と他の動物に共通する認知と感情の機構に求める際の方略を整理することを重点として取り組んだ。そのため、親の子に対する配慮のような垂直的で非対称のかかわり合いと並ぶ、水平的で対称的なかかわりであり、人間以外の動物にもその萌芽が見いだせる活動である「遊び」に注目して、ホイジンガ、カイヨワ等の業績を見直し、ヒューム的観点との接点を探った。その端緒的な成果は、6月27日の京都哲学史研究会における発表「『人間本性論』における遊び・社交・闘争」として示すことができた。それと並行して、人間の精神活動を他の動物から区別する大きな特徴である観点の一般性について考察し、動物理性と人間理性の対比とパラレルな対比が、動物の感情と人間に特有の道徳感情とのあいだに見いだせること、と向時に、道徳の一般性は、個別的な人物や行為の具体的特徴への注目と対立するものではなく、むしろ、個々の人間の置かれた状況の具体的特徴に深く分け入ることによってこそ、その状況の普遍的な道徳的正確が理解される構造になっているという認識に達した。その成果の一部は、11月に、論文「人間の動物的自然本性とそれに限界づけられた理性および社会性」として発表した。
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