2010 Fiscal Year Annual Research Report
理性的・社会的動物にかんするヒューム的観点からの研究
Project/Area Number |
21520036
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
伊勢 俊彦 立命館大学, 文学部, 教授 (60201919)
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Keywords | 哲学 / デイヴィッド・ヒューム / 理性的動物 / 社会的動物 |
Research Abstract |
応用哲学会での発表「感情に基盤を置く倫理と遠い者、異質な者への配慮」においては、現代の「ケアの倫理」との関係でヒュームの議論を検討し、必ずしも身近でない人々に対する道徳的配慮の可能性を考察した。 自然な感情にもとづくケアから出発する倫理は、しばしば、普遍的な道徳的配慮を根拠づけられないと批判される。同じく感情に基盤を置く道徳哲学として、ケアの倫理と親和性の強いヒュームの道徳感情論にあって、道徳の条件となる一般的観点の採用を可能にするのが、歴史的あるいは虚構的なナラティヴの理解をつうじて発達する物語的想像力であり、語り想像するという、遊びの要素を含んだ活動であるということを、本発表では明らかにした。 関西倫理学会での発表「動物たち(と)の自由な関係へ向けて」においては、人間と他の動物の関係にかんする哲学史上の諸構想の概観を踏まえて、人間の他の動物に対する支配や管理のあり方が、人間と人間の社会的関係と密接な関係を持ち、人間と人間の関係における自由の可能性が、人間と他の動物の自由な関係の可能性とリンクしていることに注目した。 未知で不確実な対象を追求する活動として、ヒュームは哲学的探求を狩猟になぞらえる。これらは最終的には対象を支配下に置こうとする活動である一方、それらがもたらす喜びの源泉となるのは対象自身に内在する潜在力が十全に展開され、われわれの心身がそれに対応して活気づくことである。つまり、これらの活動は、遊びの要素を含んだ闘争の性格を持つ。 二つの発表に一貫する筋道として、自由な戯れ、遊びを通じた心身の能力の発展を見出すことができる。これは、人間に特有といわれる社会的関係や意識的活動にことに顕著に表われるものであると同時に、人間以外の動物においても多様なかたちで見られ、人間と他の動物を結びつける特徴でもある。
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