2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520044
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
井川 義次 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (50315454)
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Keywords | 張居正 / イエズス会 / 啓蒙主義 / ライプニッツ / ヴォルフ / ヴィルフィンガー |
Research Abstract |
本年度はヨーロッパに与えた宋明理学の内実を深く理解するために以下の作業を行った。 A.ポーランドのクリスチャン・ヴォルフ生誕の地を訪れ、資料収集した。 B.朱子自身による儒教古典の解釈が明確に現れる『朱子語類』のうち、『論語』雍也篇をめぐる弟子たちの対話について検討し、これに関する訳注を作成した。さらに宋明理学の受容の様を、中国古典の「鬼神」「明徳」「理」「性」をめぐるヨーロッパ人の翻訳・研究を分析することを通じて検証した。 C.イエズス会士フランソワ・ノエル『中国哲学三論』による最初の「鬼神」論解釈を検討した。彼はイエズス会士における中国哲学有神論説・無神論説を見据える立場に立ち、古代から朱子、宋明期の知識人による鬼神論を比較検討し、注釈にまで遡って可能な限り客観的に解説しようとしていた。彼は祖先-子孫間の期の感応としての鬼神論を、ヨーロッパ的エーテルやアウラの視点から捉えようとしていたことが明らかとなった。 D.従来晩年になってからの中国哲学との関連が語られてきたライプニッツが、その研究生活のごく初期の二十歳代から、儒教、就中、朱子学の直接的な影響を得ていたことを、シュピツェル『中国文芸論』所収の易情報、ならびにマテオ・リッチの同僚であったミケーレ・ルッジェリならびに、『中国史』の著者たるマルティノ・マルティニによる複数の『大学』訳文の分析を通じて明らかにした。さらにはプロスペル・イントルチェッタによる『中庸』訳としては最初期の『中国の政治・道徳学』の分析を行い、ライプニッツ哲学形成における中国哲学の影響の可能性があることに関して検証した。
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