2010 Fiscal Year Annual Research Report
「朱子学」の誕生―南宋後期における士大夫思想展開の発展的研究―
Project/Area Number |
21520047
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
市來 津由彦 広島大学, 大学院・文学研究科, 教授 (30142897)
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Keywords | 朱子学 / 科挙 / 士大夫 / 為己之学 / 民間郷里社会 |
Research Abstract |
本研究の目的は、朱熹学術の受容者層からの視点、同時代諸学の相互交流という思想学の視点、地域士人の社会的あり方や科挙学術の動向という社会史の視点を取り入れ、南宋後期の士大夫思想界の思考枠組の展開現場を複合的に検証し復元することである。本年度の実施計画では、朱熹初伝に加え再伝資料の思考を解析すると述べ、北京での朱子学国際学会でこれに関連する発表をすると述べた。 ・結果的には、朱熹初伝、再伝以前の、その初伝、再伝に広まる朱熹思想自体の浸透力のしくみの、従来見過ごされていた重要な要因を上記の国際学会で論じることとなった。「朱熹四書集注中解説語措詞的形成」がその論考である。本稿は、身体的振る舞いを通してわかることや、形而上学的諸問題を、言葉を説明的に用いざるを得ない注釈という場を利用して「説明」の言葉の上に位置づけることができたことが、その学の広範な支持者を得る基礎となったことを指摘し、いつ頃どのようにしてそうしたことが朱熹において可能となったのかについて考察した。このことは初伝、再伝の人々が朱熹思想を獲得する根本要因である。充分には及べなかった年度当初の計画は次年度に実施したい。 ・「朱熹『朱文公文集』跋文訳注稿」は、朱熹の思想のみならず、その芸術観念や士大夫の日常的交遊の様態などが朱熹跋文資料にうかがえ、南宋士大夫の思想と文化意識を探るのに有用な一級資料であることから、その訳出と各条の研究的意義について検討し続けているものである。その検討内容は本課題研究副題の「南宋後期における士大夫思想展開の発展的研究」に資するものである。
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Research Products
(6 results)