2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520058
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
KRITZER Robert 京都ノートルダム女子大学, 人間文学部, 教授 (70288611)
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Keywords | 入胎経 / 印度仏教 |
Research Abstract |
私の研究の目的は、チベット訳『入胎経』の厳密な校訂本と英訳を準備することである。この経典には胎児の受胎と胎内での成長のプロセスが述べられており、その内容はインド医学文献と関係している。しかしながら、インド医学文献が月単位で成長の過程を述べるのに対して、本経典は週毎の成長を述べている。本経典はまた、チベット胎生学研究の重要な典拠となっている二文献のうちの一つである。 本経典のチベット語異訳からの英訳が、最近のある学位論文に収録されているが、それには十分な注記がされていない。私が校訂・翻訳しているチベット訳には、先行する英訳はなく、また厳密な校訂本は本経典の何れのチベット訳に対しても作成されていない。それ故、私の研究はこの重要な経典に対する研究を進める上での、信頼できる文献学的基礎を準備するものである。 本年度、私は私の校訂と英訳に対する序論の執筆を継続し、前年度のものに加えて新たに77頁を執筆した。この序論では、『入胎経』の漢訳三本と他の蔵訳二種を詳しく検討し、諸訳の関係を考察した上で、それらの内容と私が校訂・英訳している蔵訳との比較検討をおこなった。また、本経とインド医学文献における懐胎と妊娠に関する記述の相違を検討した。 6月には、台湾台北の国立政治大学における「瑜伽行派研究の新しい地平」という連続講演の一環として、「『入胎経』:仏教胎生学に関する文献」と題する講演をおこなった。との講演で、私は本経典を台湾の仏教学者と大学院生に紹介した。 8月には、国際チベット学会第12回大会において発表をおこない、恐らくは敦煌における著名な蔵訳者Chos grubによると思われる二種の蔵訳を、その蔵訳の原本であったとみなされる漢訳と比較検討した。その内容の詳細な検討により、蔵訳者は漢訳、蔵訳、あるいはサンスクリット原本のかたちで他の伝本も参照していたことが明らかになった。この発表内容は、2012年に『創価大学国際仏教学高等研究所年報』に掲載される予定である。 上述の通り、私の研究は本補助金を申請した際に私が提出した計画通りに進行している。
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