2010 Fiscal Year Annual Research Report
ジャイナ教文献研究深化のための『タルカ・バーシャー』翻訳研究
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21520061
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Research Institution | Chikushi Jogakuen University |
Principal Investigator |
宇野 智行 筑紫女学園大学, 文学部, 准教授 (40331011)
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Keywords | ヤショーヴィジャヤ / プラマーナ / ナヤ / 直接知 / 接触作用説 / ジナバドラ / ヴィドゥヤーナンディン |
Research Abstract |
平成22年度は,プラマーナ章翻訳研究会の開催(研究組織全員参加),ナヤ章の翻訳作成(宇野)を主な作業として執り行い,以下のような新たな知見が得られた. (1)『タルカ・バーシャー』における直接知の解釈・分類は,ジナバドラ以前の韻文聖典注釈『バーシャ』群に求められる.ただし,'pratyaksa'という語の文法的解釈については,ジナバドラが最もヤショーヴィジャヤに影響を与えている. (2)『タルカ・バーシャー』に展開される接触作用説は,感官にもたらされる「害・益」の有/無によって接触/非接触が判断されるという特徴を持つ.この議論の源泉は全てジナバドラ作品にさかのぼり,注釈者ヘーマチャンドラの言明を簡潔化したものである. (3)対象感受(arthavagraha)の段階での把握内容が「存在性」のみであることは,『ナンディースートラ』第58スートラについてのジナバドラ,ハリバドラらの注釈者の解釈に端を発する.ジナバドラらは,同スートラに説かれる「目覚ましの喩例」「素焼き壷の喩例」を解釈する際に,接触感受を単なる感覚器官と対象の接触段階,対象感受を対象の存在性把握段階と理解している. (4)『タルカ・バーシャー』のナヤ説は,その基本的分類法についてヴィドゥヤーナンディン著『タットヴァールタ・シュローカヴァールティカ』を模倣している.ただし,ヴィドゥヤーナンディンに見られない分類法も提示しており,その直接的ソースはジナバドラ作品である. (1)は「ジナバドラによる直接知の再編成」として『本学人間文化研究所年報』第21号において公表した.(2)は『ジャイナ教研究』次号,(3)は『人間文化研究所年報』次号において公表予定である.
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Research Products
(2 results)