2012 Fiscal Year Annual Research Report
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21520062
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Research Institution | The Eastern Institute |
Principal Investigator |
堀内 伸二 公益財団法人中村元東方研究所, その他部局等, 研究員 (20271504)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 法華経 / 教判 / 白隠 / 禅画 / 臨済宗 / 天台 / 日蓮教学 |
Research Abstract |
白隠の教判論を研究するうえで、白隠が晩年までたびたび講義をし、また版本に綿密に数度にわたり書き込みを行った『注法華経』は非常に重要なものである。そこで、昨年に引き続き、松蔭寺に所蔵されている白隠直筆の注法華経のデータベース化を行った。本年も昨年に引き続き比喩品への注釈の入力と、寿量品に対する注釈部分の入力を行った。昨年に引き続き、法華経の教学に精通している坂田氏にも協力を依頼したが、入力の過程において白隠の教判論についての議論もあわせて行った。 その結果、書き込まれた注釈から、倶舎論からの引用と思われる注釈が散見できたので、対応する倶舎論原典との比較を行うなど、倶舎論の研究も共同で合わせて行った。白隠禅師の小乗仏教観を明らかにするためには、もちろん他の諸著書の検討をはじめ綿密に究明していくことが必要となるが、法華経という非常に重要な注釈において、倶舎論がたびたび引用されていることが明らかになったことは、今後、白隠禅師の経典観を明らかにし、また教判論を究明するうえにおいて、大変意味があると思われる。これまで臨済禅は、「教外別伝、不立文字」であって、その誤解された理解にもとづき、経典を軽んずるがごとき一般的印象があるが、倶舎論に基づく綿密な注釈をみると、そのような理解が如何に皮相的なものかがわかる。 また、昨年に引き続き、白隠禅師の書画の研究も行った。その際、書画が意味する禅の歩みを理解するたに、東嶺和尚の『宗門無尽灯論』の研究を行ったが、この書に示されている禅の歩みと、白隠の書画とが密接に関わっていること、逆に言えば、同書を研究することによって、白隠禅師があらわした書画の意味が鮮明になることが明らかとなった。このことは、これまで漠然と勝手な解釈がなされたきた書画の理解の歴史を一新する成果となろう。その一端を、本年、中村元記念館において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細かな字で、行間に書き込まれている注記は、ひとつには判読しがたいところがあること、また禅師特有の自体で書かれているため判読に時間がかかっている。また本年度は、入力作業の途中で明らかになった倶舎論の研究を合わせて行ったため予定より遅れている。しかし、白隠の仏教理解を知る上では、それは非常に意味がある作業である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年特に痛感したことであるが、一人では気がつかない注釈に関する引用の原典究明という点で、法華経に精通している坂田氏との議論の必要性を痛感したので、次年度も引き続きその作業を続けていきたい。また同氏に入力解読作業を次年度も依頼し、白隠の教判論自体の究明により時間をさけるようにしたい。
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