2011 Fiscal Year Annual Research Report
古代アレクサンドリアの聖書解釈の系譜における貧困と富、禁欲の理解
Project/Area Number |
21520068
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
出村 みや子 東北学院大学, 文学部, 教授 (20183874)
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Keywords | 古代アレクサンドリア / 聖書解釈 / 貧困と富 / 文献学 / 禁欲主義 / オリゲネス / クレメンス / フィロン |
Research Abstract |
筆者は平成21-23年度の3年間にわたって「アレクサンドリア神学における貧困と富」というテーマで研究を行い、古代地中海世界有数の文化都市であったアレクサンドリアにおける神学思想の発展の意義を、貧困と富、および禁欲主義の問題に焦点を当てて考察してきた。特に昨年春に東関東大震災の直撃を受けた東北では再び貧困の問題が深刻化しており、この研究は現代の問題にも様々な示唆を与えることができる。これまでオリゲネスを中心に研究を進めてきた筆者は今回の科研によって、アレクサンドリアのクレメンスやフィロンの著作に研究対象を広げ、古代アレクサンドリアの神学の系譜の歴史的意義とそれらが後世に与えた影響を明らかにすることができた。 最終年に当たる平成23年度には、オリゲネスを中心にこれまで積み上げてきた研究を昨年6月に『聖書解釈者オリゲネスとアレクサンドリア文献学』として知泉書館から刊行した。これは平成22年3月に東京大学大学院人文社会系研究科に受理された博士論文をもとに、キリスト教の禁欲主義的伝統の祖と評されるオリゲネスの聖書解釈の特徴について、特に後代に論争の焦点となった彼の復活論理解に焦点を当てて考察を行っている。この研究は、古代図書館を中心とした文献学の一大発展地として知られる古代アレクサンドリアにおいて、オリゲネスがこの地のホメロス研究の文献学的方法を継承し、「聖書を聖書によって解釈する」聖書の内在的方法を確立したことを明らかにしたものであり、それによって彼が後のヨーロッパの禁欲主義的伝統にいかに多大な影響を与えたかを示すことができた。さらに昨年8月にはユダヤ人フィロンからクレメンスを経てオリゲネスに継承された聖書解釈の変遷についてオックスフォードの国際教父学会で発表し、「アレクサンドリア学派」としてこれまで一括して扱われてきた三者の聖書解釈のそれぞれの特徴について明らかにすることができた。
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