2011 Fiscal Year Annual Research Report
岩下壮一と綱脇龍妙にみる救癩思想の比較宗教学的研究
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21520074
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Research Institution | Fukui Prefectural University |
Principal Investigator |
輪倉 一広 福井県立大学, 看護福祉学部, 准教授 (10342122)
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Keywords | 救癩 / 岩下壮一 / 綱脇龍妙 / カトリック / 日蓮仏教 / ハンセン病 |
Research Abstract |
23年度に予定した主な取組は下記の3点であった。 1.元入所者からの聞き取り。2,論文の作成。3.研究成果の口頭発表 まず、第1の点については、とくに綱脇が救癩活動を展開した身延深敬病院の元入所者を探し、聞き取り調査を行うという計画がほぼ達成された。多摩全生園に現在入所中のM氏(昭和18年入院)から3度の聞き取りを行うことができた。その内容は研究の成果物に反映させるつもりである。また、本研究の基本的な関心である国立療養所との比較視点の確認の意味で、国立療養所の入所者・関係者から聞き取りを行った。次に、第2の点については、年度内の成果公表ができなかった。現在、日本宗教学会の機関誌『宗教研究』に投稿中の論文「ふたりの宗教家にみる<救癩>の主題化と倫理」がその成果である。第3の点については、24年6月に予定の「宗教と社会」学会の年次大会にて「ふたりの宗教家にみる準戦時の救癩思想」と題する口頭発表の予定をしている。 これらの成果は上記論文に集約されている。この論文は、岩下と綱脇のそれぞれの救癩思想をカトリックと日蓮仏教の教理認識から検討したもので、とくに1930年代という準戦時期にあって患者や<救癩>に対してもつ両者の倫理意識がどのようなものであったのかについて比較検討した。岩下は患者たちがカトリシズムを介して意識的に教会と信頼(倫理)関係を築くことで積極的・主体的な「生」を獲得する-すなわち、主体形成を図る-ことができると理解した。他方、綱脇にあっては、<救癩>の倫理的諸問題が患者を基点とすることなしに、徹頭徹尾『法華経』常不軽菩薩品の精神である「深敬礼拝」という絶対的な人間-社会の関係論へと無条件に回収されていった。
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