2010 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本の言語ナショナリズムと文化的共同体主義の研究
Project/Area Number |
21520077
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
イ ヨンスク 一橋大学, 大学院・言語社会研究科, 教授 (00232108)
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Keywords | 日本思想史 / 言語ナショナリズム / 共同体主義 |
Research Abstract |
平成22年度においては、言語ナショナリズムが共同体主義のなかでどのように表現されるかを中心に研究を進め、その問題をそれぞれ異なる角度から扱った研究発表を、国内の研究会と国外の国際学会ないし国際シンポジウムで行なった。それらの研究を進めるなかで明らかになったのは、芸術も含めた表現のなかで言語ナショナリズムがどのように表現されるかという問題であり、さらに、共同体的な言語ナショナリズムが社会の多くのメンバーに対してどのように表出されるがという問題であった。平成22年4月に昭和文学会で行なった発表では、共同体主義における他者の排除の問題をあつかったが、メディアにおける表出の問題が残った。平成22年6月にプサンで開かれた国際学会では、現代胃本の文学者による言語論を論じたが、そこでは表現のレベルの問題の扱いかたが不十分であった。こうして、一方では、共同体主義を歴史的に支える伝統の問題、他方では、共同体主義と対立するものとしての文化的・社会的「越境」の問題が、取り組むべき対象として浮かび上がってきた。当初の計画では、平成22年度後半には、言語ナショナリズムと共同体主義の関係を歴史学や倫理学の領域で追究する予定であったが、研究の方向を変更して、文学・芸術とメディアの問題を取り上げることにした。こうして、後半に発表した三つの論文(そのうち二本は図書として刊行)では、文学における「古典」概念の適用と国民的「伝統」との結びつき、共同体主義の表出形態としての詔勅とメディアの関係、植民地時代の朝鮮における舞踏家崔承喜の表現活動に見られる民族性と近代性の問題、そして「越境」のテーマを論じた。
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