2012 Fiscal Year Annual Research Report
フランクフルト学派の理論にみる倫理と公共圏に関する研究
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21520078
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
三崎 和志 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (40506961)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 倫理 / フランクフルト学派 / アドルノ / ベンヤミン / ホルクハイマー |
Research Abstract |
今年度は前年度のベルリンのベンヤミン・アルヒーフにおける調査にもとづいて、初期ベンヤミンに関する研究をすすめた。アルヒーフでおこなった系統的な二次文献の調査からこれまで重視していなかったいくつかの影響関係を見出した。主要なものは以下の二点である。 (1)マルティンブーバーの影響。ベンヤミンとユダヤ、シオニズムとの接触については、ゲルショム・ショーレムとの交友に始まるとすることが定説である。しかし、それ以前、ユダヤをめぐる友人との書簡による議論の中でブーバーへの言及がある。ブーバーとのベンヤミンの関係については、第一次大戦開戦以後のブーバーに対する否定的な態度のみを取り上げてきたが、より初期の段階においてブーバーから積極的影響を受けた可能性がある。 (2)ヘルマン・コーヘンとの関係。ベンヤミンは大学入学直後フライブルクでコーヘンに学んでいる。その積極的影響は特にベンヤミンの青年期から絶筆『歴史哲学テーゼ』にまでみられる歴史の進歩という観念に対する批判の源泉のひとつと考えられる。コーヘンの議論はドイツ社会民主党の修正主義論争とも関連するものであり、ベンヤミンとコーヘンの影響関係の考察は、フランクフルト学派の倫理思想を新カント派、社会民主党の議論と比較する重要な軸となりうる。美学思想の関連では、『ゲーテの親和力』においてベンヤミンはコーヘンの著作に肯定的に言及しながら、名指しせずに間接的な批判をおこなっている可能性がある。 今年度は以上の2点に重点を置き、ブーバー、コーヘンの著作を研究し、ベンヤミンの思想の関係について考察した。 また今年度はベンヤミンの初めてのまとまった批評『ヘルダーリンの二つの詩』の読解に労力を注いだ。その過程でヘルダーリンを参照する中で、ベンヤミンのロマン派論との関連を新たに見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題のうち、現在のところベンヤミンの初期思想に関する研究に集中することとなっている。単著の出版を目指し果たせなかったが、新たな影響関係に関する知見が得られ、それにより、フランクフルト学派の倫理と公共性について、新たな視点から考察する可能性が開けた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度にひきつづき、フランクフルト学派の倫理思想という課題の全体を視野に置きつつ、ベンヤミンの初期思想の研究に重点を置く。
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Research Products
(1 results)