2010 Fiscal Year Annual Research Report
ユダヤ系移民によるアナーキズムの形成と変容に関する研究
Project/Area Number |
21520083
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
田中 ひかる 大阪教育大学, 教育学部, 准教授 (00272774)
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Keywords | ユダヤ系移民 / アナーキズム / アナーキスト / ロシア / アメリカ合衆国 / イディッシュ語 / 歴史学 / 思想史 |
Research Abstract |
平成22年度前半の研究成果は、論文集『国民国家の境界』序文と所収論文である。同書序文では、政治学や社会学等の多様な領域の研究と本研究との関係を明示することができた。同書所収論文では、ユダヤ系移民アナーキズムの生成と変容における「人と情報の移動」「ネットワーク」の重要性、ユダヤ系移民アナーキストの20世紀後半におけるアメリカの知識人に対する影響を指摘した。本年度後半の研究成果は、まず、オーストラリアで開催された国際シンポジウムでの報告がある。同報告の準備と前年度の計画実施のため、アムステルダム国際社会史研究所において、Boris Yelensky Paper及び関連する史資料を調査し、報告では、大逆事件に関するユダヤ系移民アナーキストの見解を分析した。日本における思想弾圧に対する国際的抗議においてユダヤ系移民アナーキストが果たした役割に関する研究は未開拓の分野であり、また、前年度からの検討課題であるユダヤ系移民アナーキストの「環大西洋ネットワーク」を解明する上でロンドン・パリの重要性を明らかにしたという意味で同報告は極めて重要な成果である。シンポジウム全体の報告書は英語で発表される予定である。続いて今年度末には女性アナーキストの生涯とアナーキスト赤十字に関する論文を発表した。前年度のワシントンでの調査成果が反映されている。同論文は平成23年度の研究の準備作業であるとともに、「環大西洋ネットワーク」を移動するユダヤ系移民の分析を通じて、アナーキズムの生成と変容という本研究全体に関わる問題を解明するための見通しを示したという上で重要である。
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Research Products
(5 results)