2009 Fiscal Year Annual Research Report
転換期における「貧困」に関するアウグスティヌスの洞察と実践の研究
Project/Area Number |
21520084
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
出村 和彦 Okayama University, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (30237028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上村 直樹 東京学芸大学, 教育学部, 非常勤講師 (40535324)
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Keywords | アウグスティヌス / 貧困 / 教父 / キリスト教 / 『神の国』 / 修道制 / 古代末期 / 転換期 |
Research Abstract |
研究初年度に当たり、両研究者は緊密な連絡の下に基本的なテクスト資料・データベースの整備に当たり、両名とも、9月に「アジア環太平洋初期キリスト教学会(APECSS)国際研究集会」(仙台)で発表し、研究協力者Pauline Allen教授(オーストラリアカトリック大学初期キリスト教研究センター所長)との意見交換を行った。さらに、11月に中世哲学会(富山)で打ち合わせを行い、また両名とも10年3月に第1回韓国教父学会国際研究集会(ソウル)にて発表し、オーストラリアチームの共同研究書Preaching Poverty in Late Antiquity (2009)の成果を批判的に検討することに着手した。具体的には、出村は、アウグスティヌスの「貧困」に対する洞察の基本的前提となる彼の修道生活における「貧困」の自己理解のあり方を検討した論文を公表した。ついで、貧困への洞察の神学的基礎となる彼の『パウロ書簡』解釈の発展を跡づける試みをAPECSS研究集会で発表した。さらに『説教』や『詩篇注解』の精査を通じて、貧しい他者への施しなどの実践的関わりを唱道するアウグスティヌスの論述の理論的根拠を提示し彼のキリスト教倫理の特徴の解明を試みた。 上村は、計画全体の基盤となるアウグスティヌス初期の「貧困」を包括的に検討した論文を公表した。またアウグスティヌスの宗教的な言説の典型といわれる「霊的な修練(exercitatio animi)」の実態を検討することによって、宗教に対してとるべき態度がいかに形成されているかを解明することに着手した。「霊的な修練」のアウグスティヌス「書簡」全般での実態を検討した成果を、9月にAPECSS研究集会で発表し、ついで「霊的な修練」の始まりを解明した成果を10月の国際教父・中世・ルネッサンス学会(フィラデルフィア)にて発表した。さらに、次年度以降の研究の中心となる『神の国』での「貧困」の問題圏における社会性の実態について、韓国ソウルでの国際研究集会にて発表し課題となるべきテーマを絞りこむことを試みた。
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Research Products
(8 results)