2009 Fiscal Year Annual Research Report
東アジア世界における近世日本の祭祀秩序観の独自性の解明にかかる研究
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21520091
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
井上 智勝 (財)大阪市博物館協会, 大阪歴史博物館, 学芸員 (10300972)
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Keywords | 宗廟 / 国家祭祀 / ベトナム / 朝鮮 / 琉球 / 社稷 |
Research Abstract |
本年度は、近世日本・それ以外の国々(中国・朝鮮・ベトナム・琉球)についてそれぞれに作業を行い、各々以下のような成果を得た。 まず、日本については、ア:儒学者・幕藩領主らの著作から、彼らが理想とする祭祀秩序観の抽出、イ:九州において「宗廟」と呼ばれる神社の事例調査、ウ:岡山藩の史料による同藩主池田家の家廟祭祀の検討、という作業を進めた。その結果、近世日本の宗廟観にかかる、次のような知見を得るに至った。すなわち近世日本には、(1)二所宗廟観・天皇霊を祭神とする神社とする中世以来の伝統的宗廟観、(2)武家家廟を宗廟と呼ぶ事例、(3)地域・同族の鎮守神という宗廟観、の3つの宗廟観が併存していたことが確認できた。(1)は、伊勢を第一宗廟として重視し、天皇~庶人に至る崇敬を集めるべき惣氏神と位置づけるもの、(2)は、儒典に照らした場合最も本義に近いが、近世に至って鴻儒大名によって導入された新しい観念である。(3)については、九州でその事例が濃密に認められ、17世紀の前期から用例がある。 日本以外の国々については、琉球・中国(明・清)・ベトナム(主に後黎朝・阮朝)・朝鮮についてそれぞれに宗廟および国家祭祀関連施設(社稷壇・文廟・陵墓・歴代帝王廟など)の実見し、比較研究の基盤形成を行った。ベトナム・朝鮮・琉球については国家祭祀関係文献(刊本)の収集を、朝鮮・琉球についてはそれに加えてマイクロフィルム及び紙焼き史料収集を行った。ベトナムについて『大越史記全書』『歴朝憲章類誌』などの漢字文献から、国家祭祀に関する記述の抽出を行ったが、完了はしておらず進行中である。これらによって得た資料は現在分析中で、来年度に論文の形で発表することを目指している。
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