2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三浦 篤 The University of Tokyo, 大学院・総合文化研究科, 教授 (10212226)
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Keywords | 西洋美術史 / 19世紀フランス絵画 / マネ / 近代絵画 |
Research Abstract |
今年度は《草上の昼食》と《オランピア》に関するサロン批評を徹底的に調査し、分析した。前者に関しては、1863年の落選者のサロンの批評の中に言及があり、男女のピクニックという主題の不道徳性、遠近法やデッサンなど技法の欠如などが批判の対象となったことが理解できたが、作者の意図、絵の意味が不可解だという反応も目立ち、通常の絵画の基準を逸脱するマネの作品の特質が明らかになった。1865年のサロンで大スキャンダルを起こした後者に関しては、相当数の批評が確認され、やはり西洋絵画のヌードの伝統を否定するその斬新さが、主題、様式の両面でさまざまに非難されている。《オランピア》については、ティツィアーノの《ウルビーノのヴィーナス》との関係、サロン絵画との比較、娼婦の表象等々の観点から分析結果をまとめ、『ヴィーナスの変貌』(三元社)という論文集に掲載されることが決まっている。この他、マネにとってきわめて重要な画家ベラスケスが与えた影響を再考するための調査も行った。とりわけ1865年のスペイン旅行をはさんだ時期と晩年において、マネにとってベラスケスの存在がいかに大きなものであったのか、その本質的な共通性も含めて考察の成果を論文にまとめて発表した。さらに、1870年代の作品《オペラ座の仮装舞踏会》の2つのヴァージョンの様式を比較して、これまで下絵と見なされてきたブリジストン美術館所蔵作品が実験的な独立作品であることを論証する発表をシンポジウムで行い、その結果をフランス語で論文にして刊行した。
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Research Products
(3 results)