2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520096
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
高岸 輝 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 准教授 (80416263)
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Keywords | ランドスケープ / 土佐光信 / 絵巻 |
Research Abstract |
ランドスケープの成立という視点から、日本の中近世絵巻を中心に研究を推進した。最終年度に当たる本年度は、ドイツ・ベルリン・アジア美術館に所蔵される「天稚彦草紙絵巻」に関する研究論文のほか、研究成果の口頭発表・講演に注力した。「天稚彦草紙絵巻」において絵師の土佐広周は、物語の舞台背景の描写を極小としている点に特色がみられるが、これは次世代の土佐光信の小絵にもつながる点で室町土佐派絵巻の転換点に位置づけられる。「洛中洛外図屏風」の初発的な作例を創造した土佐光信の活動については、こうした絵巻を用いた分析が有効であると思われる。 招待講演は、ドイツ1回、スイス1回、フランス1回、米国3回、国内2回である。シンポジウム等の主題によって内容はそれぞれ異なるが、13世紀のメトロポリタン本「北野天神縁起絵巻」、弘安本「北野天神縁起絵巻」断簡、14から15世紀の「融通念仏縁起絵巻」、15世紀末の「槻峯寺建立修行縁起絵巻」、16世紀の文化庁本「酒飯論絵巻」など広く中世の作例を取り上げて、そのストーリーと絵画の対応関係を基盤に、絵師が特に屋外の景観をいかに表現したかという点に注目し、中世前期から、新たな風景表現であるランドスケープが成立していく中世末期への流れを追った。特に、海外における講演・口頭発表においては、イタリアやドイツルネサンス期における風景画の発生状況と比較をすることによって、国際的な視点からの日本美術史の可能性を追究した。
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Research Products
(10 results)