2009 Fiscal Year Annual Research Report
装飾と「他者」-両大戦間フランスを中心とした装飾の位相と「他者」表象
Project/Area Number |
21520097
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
天野 知香 Ochanomizu University, 大学院・人間文化創成科学研究科, 准教授 (20282890)
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Keywords | 美術史 / 装飾 / フランス / プリミティヴィズム / 19世紀:20世紀:現代 / ポストコロニアリズム / 植民地博覧会 / 他者表象 |
Research Abstract |
本研究のテーマに基づき、本年度はまず、 1,国内において収集可能な資料を通じて、オーウェン・ジョーンズ、アロイス・リーグルを中心に、ヨーロッパにおいて近代的美術史学の形成期における芸術と装飾の概念の位相と、西欧における植民地主義を背景とする非西欧の情報や物の流入に伴う「他者」への関心との関わりを検討した。その結果従来のいわゆる「プリミティヴィズム」研究において見逃されてきた、19世紀後半における産業/装飾芸術振興運動や学問としての装飾史の形成と、「他者」の問題との関わりの深さと重要性が明らかになった。 2,フランスの19世紀後半から1930年代に至る装飾芸術と他者表象の関連をめぐる実例調査とその背景となる状況を理解するための資料収集を目的に、2009年8月22日から9月2目まで、パリの国立図書館、装飾美術館及び同付属図書館等における資料収集、作品調査を実施し、さらに3月にも補足調査を行った。この調査においては1921年、1931年のマルセイユ、パリにおける植民地博覧会を中心に、博覧会の公式報告書や当時の定期刊行物、さらに装飾美術館収蔵の収集家ジャック・ドゥーセの旧所蔵品を調査することで、当時の装飾芸術における非西欧の技法、素材、造形の積極的な取り入れや他者表象の実態を明らかにした。 3,2009年9月3日から7日までのベネチア・ビエンナーレの視察や国内での現代美術の調査により、ポストコロニアリズムの文脈において非西欧出身の現代美術家がグローバル・マーケットに登場する現状において、装飾や文様といった要素や問題がいわゆるポストモダニズムにおける装飾偏重に留まらない重要な問題として前景化していることを確認した。 以上の研究の一部を雑誌に発表し、現在入校中の論文で研究全体の序論となる部分を執筆した。 本年度の調査を通じ、本研究の意義が改めて確認されるとともにさらに調査を深める必要が実感された。
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Research Products
(2 results)