2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520099
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
並木 誠士 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (50211446)
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Keywords | 美術史 / 障壁画 / 画題 / 狩野派 / 屏風絵 / 韃靼人図 |
Research Abstract |
本申請課題「障壁画の画題・表現・機能-会所から城郭へ-」は、わが国の15世紀から16世紀にかけての障壁画の実態把握を目指した研究である。障壁画は、建築と一体になり人びとの生活空間を形成するものだが、本研究では、とくに、15世紀における室町将軍邸における会所と16世紀から17世紀にかけての城郭に焦点をあてて、それぞれの建築空間のなかで、どのような画題が選択され、それがどのようにと表現され、見る/見せる人にとってどのような意味をもったのかの解明を目指した。 建物と一体になって障壁画が現存する例は、15世紀は言うまでもなく、16世紀においても非常に少ない。本研究では、現在、屏風形式に改装されているものの、制作当初は襖絵であったことのわかる例をできるだけ多く調査することとした。具体的には、久遠寺障壁画、名古屋市総見寺花鳥図、愛知県正宗寺所蔵花鳥図、名古屋市興正寺所蔵花鳥図および唐人物図、宇和島伊達博物館蔵唐人物図、ボストン美術館蔵韃靼人朝貢図などであり、これらの作品調査により、16世紀の障壁画の様相についての検討をおこなった。また、その作業と並行して、九州国立博物館蔵韃靼人図と新出のサントリー美術館蔵韃靼人図とが、本来、一連の障壁画であったことを考察し、論文にまとめている。 また、15世紀において独立した建物として成立をした会所に注目をして、ここでの障壁画の実態と機能について考察した。会所における障壁画は、唐物とは異なりそれ自体が直接的な価値をもつものではなく、それに似せたもの、つまり「擬似唐物」として装飾的機能をもっていた。このような「擬似唐物」としての障壁画の展開を、韃靼人図を通して考察し、同様に論文にまとめている。
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Research Products
(2 results)