2011 Fiscal Year Annual Research Report
カトリック改革の画像戦略と美術への影響に関する研究
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21520101
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮下 規久朗 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (30283849)
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Keywords | バロック / カトリック改革 / ヴェネツィア / 南蛮美術 |
Research Abstract |
本研究は、カトリック改革が西洋美術に及ぼした影響を解明するため、16 世紀後半から17 世紀初頭にいたるイタリアを中心とする教会と美術、政治と美術との関係に注目し、作品検閲・装飾事業・収集活動といった、作品をめぐる権力と受容の問題を通して、カトリック改革が、マニエリスムとバロックとの過渡期であるこの時代の美術にどのように具体的に作用したのかを探るものである。16 世紀後半に日本にもたらされ、南蛮美術に継承されたが、教皇庁や教団の画像輸出政策と画像をめぐる宣教方針についても、記録・資料と布教用画像との両面から調査する。 平成23年度は、前年度に引き続き、イタリアにおけるカトリック改革期の美術の諸相や美術理論について調査した。とくにヴェネツィアのバロック美術についての資料を収集し、ローマやボローニャのようなカトリック改革の本拠地とは異なるバロック美術の様相について考察を深めた。ヴェネツィアでは、16世紀末と17世紀初頭のペスト流行によってバロック様式の流行が遅れたが、それだけでなく、政治経済上の衰退と戦乱による疲弊が17世紀美術の停滞を招いたこと、その中からバルダッサーレ・ロンゲーナのようなユニークなバロック建築が登場したこと、17世紀末からのイエズス会の再登場がバロックを推進したことなどを具体的に跡付けた。 また、国内の南蛮美術関係の資料を収集し、イエズス会年報など文献資料からもカトリック改革運動との接点を探った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
イタリアでのさらなる現地調査が必要であると感じられた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はイタリアでの現地調査のほか、国内の南蛮美術関係資料をさらに精査する。
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