2011 Fiscal Year Annual Research Report
ソフォニズバ・アングィッソーラ研究:十六世紀イタリア女性肖像画の諸問題
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21520102
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Research Institution | Hyogo University of Teacher Education |
Principal Investigator |
喜多村 明里 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 教授 (90294264)
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Keywords | 美術史 / 肖像画 / 女性 / 16世紀 / アングィッソーラ |
Research Abstract |
1)15-16世紀の肖像画概念と肖像画の受容の状況、ソフォニズバ作品に関する批評記述について、L・B・アルベルティ(1434/35年)、レオナルド・ダ・ヴィンチ(15世紀末)、G・ヴァザーリ、(1550-1568年)、G・P・ロマッツォ(1584年)のほかA・カーロ書簡(1558-59年)について、原文を精読しつつ訳文を整えて、論文執筆を開始している。 2)ボッカッチョの著作『著名女性伝(通称:名婦人伝)』以降、15-16世紀に流布した数多くの女性論の著作や抄本のうち、「女性と絵画」あるいは「女性画家」の概念と関わる事例を集成し、検討を進めた。<肖像を描くマルキア>など、すぐれた美術家として伝承されていた古代女性の事例を絵画化した細密画装飾写本の挿画の例は、「女性画家」のイメージを描き伝えるが、それはまた同時に、<絵画芸術の寓意像>に変換または同化される傾向をはらむ。また、カスティリオーネ『宮廷人』が論じる<カンパスペを描くアペレス>の逸話が、「画家=男性」と「モデル=女性」という関係性を前提としていた。これらの人文主義的な思潮・事例に留意するなら、ソフォニズバが自画像を数多く描いたこと、さらには師匠の肖像画として《ソフォニズバ・アングィッソーラを描くベルナルディーノ・カンピ》を手がけ、カンヴァスに向かいながら振り向くカンピの姿を通じて「画家である男性モデルを描く女性画家」としての自己と「師匠の談背画家のモデルとなっている自己」を表出していることの背後には、洗練された女性画家の知略が隠されていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学務多忙のほか、別途共同執筆著作のためのミケランジェロ・ブオナッローティに関する論文「システィナ礼拝堂天井大ペンデンティヴにみる<罪と罰>および<信仰と救済>をめぐる歴史神学:《ダヴィデとゴリアテ》《ユディットとホロフェルネス》《ハマンの礫刑》《青銅の蛇》」の入稿・図版準備に予想以上の時間を要したため、当該研究課題の論文執筆と学会発表申込みがやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
所属する学会で口頭発表ないし論文投稿を今年度中に行いたい。全国大会のほか、各学会例会での破究発表を申し込む予定でいる。ただし、近年の学会発表・投稿応募数の増加と若手研究者の増加により、発表の機会が得られない可能性もあると考えているところであり、その場合は、自著論文・研究資料翻訳文などをまとめた印剛物として研究成果報告書を作成し、美術史学研究者に送付する形で成果を示したいと考えている。
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