2011 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム化以前におけるインドネシアの法具に関する総合的調査研究
Project/Area Number |
21520104
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
伊藤 奈保子 広島大学, 文学研究科, 准教授 (20452625)
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Keywords | 密教 / インドネシア / 法具 |
Research Abstract |
今年度は最終年度にあたり、インドネシアにおける法具に関する総合的調査研究の総括を中心においた。また、平成23年9月と平成24年3月に、オランダ、フランスの大学、博物館等に赴き、本研究から導き出される論について、東南アジア美術史を専門とする研究者、学芸員達と直接意見を交換し、資料調査を行った。そして平成21年からの3年間、調査を敢行したインドネシア、カンボジア、オランダ、フランス等の研究機関、博物館等に、本研究の報告書の作成、及び書籍出版に向けての許認可等を得た。 期間内に収集した膨大な資料を分析した結果、以下のことが導き出された。インドネシアの法具のうち、儀礼に用いられる金剛杵・金剛鈴については、中部ジャワ地域を中心に8~10世紀頃、鈴杵ともに切っ先の閉じた「閉鈷式」が、また東部ジャワ地域を中心に10~15世紀頃「開鈷式」が制作され、こうした形状、技巧等の変化より、文献では判然としなかった王朝の移行が読み取れるものと考察した。そしてこの法具の分析結果は、さらにアジアにおける密教の伝播を推察することを可能にするものと考えられる。すなわち、アジア地域において、現段階で中国、韓国、日本等に「閉鈷式」の鈴杵が確認でき、タイ、カンボジア等では「開鈷式」がみられることから、前者の地域が後者に先んじて、密教が流伝した可能性が高いと推察することができる。 また、鈴杵以外の法具については、〓や六器、柄香炉、浄瓶等、像の持物として、水瓶・数珠等の分析を行った。この成果も鈴杵同様、東南アジア宗教美術を研究するうえで、一助と成りえるものと考える。
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Research Products
(2 results)