2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520107
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
関村 誠 広島市立大学, 国際学部, 教授 (20269583)
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Keywords | 美学 / 哲学 / 感覚論 |
Research Abstract |
プラトンにおけるアイステーシスのあり方を明確化するキーワードとしての「尺度」、「現れ」などの概念をめぐって、感覚の領域に関わる機能がいかに働いて彼の思想構造に組み込まれているかを考察した。とりわけ、『パイドン』以後のプラトン思想の展開においても感性の機能に対する問題意識が形而上学的思索の発展に通底していることを明らかにすることに努めた。「尺度」(metron)に関しては、感覚の対象のあり方と感覚の機能のあり方とを秩序づける働きをもっていることを明確にし、さらに、「虚像」(phantasma)としての現れと「似像」(eikon)としての現れを区別する要因として、モデルとの尺度に適っているかどうかという「つりあい」(summetria)の問題を考察した。「似像」の条件であるモデルと現れとの間の事実上のつりあいと、「虚像」をもたらす見かけ上のつりあいとを見定めた上で、前者のつりあいとの関連で、プラトンが「尺度に適ったもの」と「尺度に反したもの」とを対立させていることをテキスト分析を通じて明確化した。尺度の問題に関しては、国際プラトン学会(慶應大学)で発表することができた。また、フランスのプロヴァンス大学で『パイドン』に見られる美の問題をプロティノス思想との関係を含めて研究発表し、ベルギーのブリュッセル自由大学で、日本文化との比較をおりまぜながら『国家』第十巻の「模倣」(mimesis)と「自然」(phusis)について発表し、パリ高等師範学校において、やはり日本文化との比較を行ないつつ『国家』教育論の議論の解釈について発表した。以上を通じて、プラトン思想における感覚の位置づけについての考察を深め、『パイドン』から『国家』にかけての理論展開をより明らかにすることができた。
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Research Products
(4 results)