2009 Fiscal Year Annual Research Report
ジョルジュ・ド・トレッサンにみる20世紀初頭の日本美術研究の諸相
Project/Area Number |
21520111
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
南 明日香 Sagami Women's University, 学芸学部, 教授 (20329212)
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Keywords | ジョルジュ・ド・トレッサン / 日本美術・工芸 / 日本美術研究 / 20世紀初頭 / ジャポニスム / 書簡 / コレクター / 鍔 |
Research Abstract |
ジョルジュ・ド・トレッサン(1887-1914)に、活字化された伝記資料はほとんどない。執筆目録は南が作成したもののみである。したがって21年度は遺族の元での遺品調査及び関係機関に残る資料の調査を重点的に行った。まずトレッサンの義弟)について著作のあるMurie氏と連絡をとり、家族を紹介していただいた。Murie氏を含め以下の方はすべてフランスの地方在住である。調査は8月と12月の2回行った。その結果、トレッサンが大手メルキュール・ド・フランス社から著書を刊行した経緯、英仏独の日本美術研究者や刀の鍔の蒐集家と頻繁に情報を交換していたこと、それによって自分の論文の主題を方向付けていたこと、日本人に文献読解の協力を得ていたこと(画家の山下新太郎等)、パリ日仏協会やベルリンの東亜雑誌、日本の刀剣会との関係などが明らかになった。 さらにパリの装飾美術館で新たにトレッサンが執筆した論文や寄贈本を発見。ギメ東洋美術館で書簡の一部と、執筆するときに参考にしたフランス人コレクターの売り立てカタログを調査、美術史図書館(INHA)でトレッサンが館長のDoucetにあてた書簡を見出した。交流のあった日本美術研究家や蒐集家について知識を得るために、関連記事、論文などを探して時代背景を確認した。 トレッサンは古代仏教美術、絵巻物などの大和絵、中世の水墨画とそれに影響を与えた中国の宋や元の時代の絵画、浮世絵、刀の鍔など幅広く執筆している。そこで各ジャンルの知識を得るために日本と台湾の各地の関連する展覧会を見学した。これによって彼がどのような傾向の作品をどのような形で見、作品を評価していたかその基盤が見えてきた。刀の鍔についてはフランス人蒐集家として大変有名なBriot氏にご教示戴いて、参考文献を集めている。 以上、トレッサンの美術史研究の情報源、西欧と日本のネットワークがほぼ明らかになり、その特色もつかめてきた。2009年冬に論文一本を執筆、目下2本を審査に出している。
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