2011 Fiscal Year Annual Research Report
ジョルジュ・ド・トレッサンにみる20世紀初頭の日本美術研究の諸相
Project/Area Number |
21520111
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
南 明日香 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (20329212)
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Keywords | トレッサン / 日本美術 / 水墨画 / 鐔 / ミュンスターベルク / フランス / ジャポニズム / 中国絵画 |
Research Abstract |
平成23年度の成果は、以下の3点にまとめられる。 1.トレッサンの室町期絵画評価について。従来フランスで評価の単純であったこのジャンルについて、イギリスでの日本絵画評価、日本の『國華』や『眞美大観』での水墨画再評価や中国絵画論、フランスでの中国の画論の研究などを踏まえて組み立てた論を分析。成果は東京文化財研究所の研究会で「ジョルジュ・ド・トレッサン(1877-1914)の室町期絵画評価」として口頭発表(6月29日)。現在論文を執筆中。 2.トレッサンの鐔研究について。トレッサンの鐔に関する諸論考のなかで、物語や伝説に由来する文様に関して分析。結果は論文「ジョルジュ・ド・トレッサンの鐔研究における文様と物語絵」(『相模国文39号』)またにまとめた。また彼のコレクションの1932年の売り立ての結果とその残りの分について、パリの鑑定家の元にある保存資料などで追跡調査が出来た。 3.オスカー・ミュンスターベルクの旧蔵書について。トレッサンと交流のあったミュンスターベルクの蔵書の一部が、東北大学附属図書館に混配されていることが判明した。調査の末、極東美術・工芸に関する日本と西洋の研究書と、研究者間で交換していた論文のファイル、ベルリンで作成された蔵書リスト(1924年)と東北帝国大学の購入に関する複数のリスト(1926年頃)が見つかった。これらによって西欧での極東美術研究の実態と研究者ネットワークの存在が鮮明になり、かつトレッサンの位置も相対的に把握できるようになった。購入にかかわった大学関係者の、西欧での極東美術研究への関心も明らかになった。 この他2010年に執筆と訂正を続けたフランス語での投稿論文が、4月に刊行され、それをきっかけに新たに遺族からの資料提供があった。フランスでの日本美術研究について「フランス語に「翻訳」された日本文化」(『満鉄と日仏文化交流誌「フランス・ジャポン」』ゆまに書房2012年5月刊行予定)で解説。
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