2009 Fiscal Year Annual Research Report
日本近世における視覚文化の美的構造―美的性質の類型論を手がかりに
Project/Area Number |
21520113
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岸 文和 Doshisha University, 文学部, 教授 (30177810)
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Keywords | 美的性質 / 美的用語 / 視覚文化 / ヘルメレン / 深さ |
Research Abstract |
本研究は、日本近世における美的世界の全体構造を把握するために、次の2つのことを行うことを課題とする。すなわち第1に、近世の文学・随筆・画史・画論のテクストにおいて、視覚文化について語るために使用される美的用語(aesthetic term)を博捜し、共時的な視点から、それらがどの種の対象に対して適用され、どのような美的=感性的な性質を意味しているのかを分析的に記述すること。第2に、そのようにして確定された美的性質を、ヘルメレン(G.Hermeren)の「美的性質の類型論」--ゲシュタルト的(gestalt)/趣味的(taste)/自然的(nature)/行動的(behavior)/表出的(expressive)/反応的)(reaction)性質--に基づいて整理し、個別的な美的性質が相互に取り結んでいる関係・布置を明らかにすることである。 平成21年度は、岩波書店の「日本古典文学大系」をデジタル化した国文学研究資料館の「日本古典文学本文データーベース」の近世の部(505作品)を利用して、日本近世の視覚文化について語る美的用語の収集を試みるとともに、次の2編の著書(分担)を執筆した。すなわち、「北斎画<富嶽三十六景>の制作順序--空間構成を手がかりに」(近畿大学日本文化研究所編『日本文化の中心と周縁』、43-61頁、風媒社、2010年3月)は、「富嶽三十六景」全46点の制作順序を手がかりにして、「深さ」という美的性質(ヘルメレンの類型論で言う「自然的性質」)が、日本の「名所絵」によってどのように志向/表現され、当時の人たちによってどのように知覚/受容されていたかを明らかにすることを試みた。また、「メディアとしての芸術=環境」(松井利夫・上村博編『芸術環境を育てるために』、261-304頁、角川学芸出版、2010年3月)は、言語的/視覚的コミュニケーションのメディア的性格を「記号学」の観点から整理することによって、「美的性質」の位置/位相を理論的に確認することを試みた。
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article]2010
Author(s)
岸文和
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Journal Title
芸術環境を育てるために(「メディアとしての芸術=環境」)(松井利夫・上村博編)(角川学芸出版)
Pages: 261-304
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[Journal Article]2010
Author(s)
岸文和
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Journal Title
日本文化の中心と周縁(「北斎画<富嶽三十六景>の制作順序--空間構成を手がかりに」)(近畿大学日本文化研究所編)(風媒社)
Pages: 43-61
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