2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520122
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 幸人 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 准教授 (30374169)
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Keywords | 美術史 / 神道美術 / 神仏習合 / 在地縁起 / 天神信仰 / 絵巻 / 浄瑠璃 / 絵本・読本 |
Research Abstract |
今年度は、おもに作品調査と資料収集、その分析・考察を行い、次年度以降の基礎調査を行った。 実地調査はあわせて5回行い、常盤山文庫所蔵の天神縁起絵巻等の調査ができたが、新出資料として、大阪天満宮所蔵天神縁起絵屏風、益田市萬福寺所蔵掛幅天神縁起絵等の存在を見出すことができた。またギメ美術館本天神縁起絵の様式について検討を試みることができた。おもな研究成果と進捗状況は以下のとおりである。 (1)太宰府満盛院本天神縁起絵(「太宰府系」縁起絵)について 島根県益田市萬福寺にて掛幅形式の天神縁起絵(紙本着色、10幅、18世紀)を見出すことができた。 同本は、太宰府天満宮所蔵12幅本との密接な関連が指摘でき、その存在は、先般初めて紹介した菅生天満宮(大阪府堺市)12幅本、および九州地方に伝来する諸本(未紹介)とともに、仮に「太宰府系」と呼びうる掛幅形式天神縁起絵の存在を確かなものにする。近世の天神縁起絵展開への視野が大きく開けうるものである。(太宰府天満宮文化研究所他と協力して関連図録制作の企画が進められている。) (2)ギメ美術館本天神縁起絵の伝来と絵画様式について 京都府長岡京市史編纂室とも協力して資料解読にあたり現長岡京市に伝来したことを確認した。 また同本の絵が初期図様を用いながら描法には窪田派の様式との共通性が確認され、いまだ不明な点の多い天神縁起絵の制作環境についても新たな視点を提供できる。 (3)天神縁起絵巻、版本等の詞書翻刻 調査収集した多治速比売神社本、天神一代記図会等の翻刻作業を引き続き行っている。 *このほか、近代文芸や演劇における「菅公イメージ」の資料収集を続けている。 なかでも、谷崎潤一郎著『少将滋幹の母』における『大鏡』時平伝の利用は従来も指摘されていたが、「丁類」の天神縁起の文言が確認できたことも今年度の検討事項として、つけくわえておきたい。
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