2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21520122
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 幸人 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (30374169)
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Keywords | 美術史 / 天神信仰 / 神仏習合 / 神道美術 / 在地緑起 / 絵巻 / 教科書 / 銅像彫刻 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度に引き続き、作品調査と資料収集、その分析考察を行い、実地調査は、関西方面、東京方面、あわせて4回行った。 おもな研究成果と進捗状況は以下のとおりである。 (1)菅生天満宮所蔵・掛幅形式天神縁起絵について 従来その詳細が未紹介であった近世天神縁起絵である菅生天満官12幅本(大阪府堺市)をとりあげ、形式と内容との関連およびその在地性に注目しつつ分析した論文「菅生天満官所蔵・掛幅形式の天神縁起絵について」(武田佐知子編『太子信仰と天神信仰-信仰と表現の位相-』、思文閣出版、2010年5月15日発行所収)を発表した。 (2)太宰府系縁起絵およびギメ美術館本天神縁起絵について(昨年度に引き続き) 昨年度調査で見出された益田市萬福寺所蔵天神縁起絵は、太宰府天満官12幅本と密接な関連があり、その存在は、菅生天満官12幅本(上記(1)参照)および九州地方に伝来する諸本とともに「太宰府系縁起絵」と呼びうる掛幅形式天神縁起絵の存在を確かなものにした。また現長岡京市に伝来したことを確認したギメ美術館本は、縁起絵初期図様を用いながら描法に窪田派の様式との共通性が認められる。 これらはいずれもいまだその全容が未解明である近世天神縁起絵の考察を大きく開くものといえる。その研究分析および紹介のため、現在、太宰府天満官文化研究所、長岡京市史編纂室と関連図録制作を進めている。 (3)近代文芸・造形作品における「菅公イメージ」の資料収集 多様な分野における「菅公イメージ」の収集に鋭意努めているが、今年度はとくに、近代の学校教育現場での菅公像について、おもに京都市内学校所蔵品を調査した。また近代の菅公像の代表的な作例とされる東京・高尾天神社設置の渡辺長男作銅像菅公像(昭和5年制作)等、近代彫像についてもデータ収集に努めた。
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